神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

「星辰剣を持っていけ」

そう言って、ジュリスはベリクリーデに武器を渡した。

…そういえばジュリスは昔、別の世界で、武器商人をやっていたんだったな。

あのときは、俺の人格の一つが世話になった。

もう、遠い昔の話のように思えるが…。

武器商人をやっていたお陰で、ジュリスには色々な武器のコレクションを持っているらしい。

今ベリクリーデに渡した、星辰剣という両手剣も、そのコレクションの一つだろうか?

「…と言っても、夜じゃないから、大して役に立たないかもしれないが…」

「ううん、大丈夫。ありがとう」

ベリクリーデは有り難く、その剣を受け取っていた。

俺は知る由もないことだが、星辰剣は星魔法という、これまたかなり特殊な魔法によって扱う武器。

星魔法はその名の通り、星の力を行使する魔法である。

その特徴としては、空に星が出ている夜の時間帯に威力を増し、星の出ていない時間は、その力が一時的に制限される。

つまり、ベリクリーデもルディシアと同じで、夜の時間だけ超強化されるのである。

しかし、今の時間は午後。

空には太陽が高く上っていて、星が出てくる時間になるのは、まだまだ何時間も後だ。

それが分かっていたから、ジュリスはベリクリーデが戦うことに、難を示していたのだ。

俺もそうと知っていたら、もっと憤慨していたに違いない。

いくらなんでも、条件が不利過ぎる、と。

…まぁ、抗議したところで、俺達に選択権などないのだから。

結局は、この条件を呑むしかないのだが。

「それじゃあ、行ってくる」

俺達は手に汗を握っているのに、当のベリクリーデは涼しい顔だった。

全く緊張している様子はないし、冷静そのものである。

それ事態は有り難いが、これから国と国の威信を懸けた決闘が始まることを、ちゃんと理解しているのだろうか。

理解していようといまいと、決闘は待ってくれない。

「それではこれより、決闘一回戦を開始します」

審判役のマミナ・ミニアルは、競技場の中央に立ち、そう宣言した。

「アーリヤット皇国代表、バニシン・エル・エドマン。前へ」

先に名前を呼ばれたのは、アーリヤット皇国代表のバーサーカー。

あいつ、そんな名前なのか。

名前からして、強キャラ感が滲み出ている気がする。

いかにも強そうじゃん。

そのバニシンとやらは、これから決闘が始まることを理解しているのかいないのか、喜々とした表情で登場。

俺の身長ほどもある巨大な斧を、なんと片手で担いでの入場である。

あんなもの振り回してみろ。あっという間に競技場が破壊されるぞ。