神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

「初撃を受け止められてしまったら、その後は一方的に向こうに殴られるぞ」

「そうなったときは、もう仕方ないよ。初撃で失敗したら、潔く負けを認めて責任取って切腹しよう」

本当に潔いな、令月。お前って奴は。
 
切腹はしなくて良いからな。

「国の命運を懸けた決闘を、最初の一撃だけに託すのは、あまりにリスキーだと思う…」

天音が、不安そうな顔で言った。

…そうだな。

言うは易しだが、実際に最初の一撃だけに全てを込めろと言われたら…。

…正直、俺には自信がない。

むしろ力み過ぎて、その渾身の一撃を外すかもしれない。

そうなったら目も当てられないな。切腹しよう。

「じゃあ、どうするの?」

「そうだね…。…まずは、敵の能力を把握する為に、距離を取って敵の出方を伺って、時間を稼ぎながら対応策を考える、とか…」

「…なんか、そんなことしてる間にやられそうだね」

おい、やめろ令月。

そんな冷静に正論を言うな。

「まだ勝負に出るべきじゃないって尻込みしてたら、一生尻込みしたまま決闘が終わるよ?」

「それは分かってるけど…。考えなしに突っ込んで玉砕するよりは…」

「考えなしに突っ込んで玉砕しても負けても、じっくり考えて敵の罠にかかって負けても、負けた事実に変わりはないけどね」

やめろって。

負ける負ける言うな。余計不安になってくるじゃないか。

気分で負けたら、それこそ終わりなんだぞ。

「…ジュリス、何とか言ってやってくれ」

多分この代表団の中で、お前が一番冷静に戦況を理解出来る人物だろうから。

「俺かよ?…まぁ、こればかりはケースバイケースと言うしかないな。敵の能力が発動に時間のかかるタイプだったら、そこの元暗殺者が言うように、能力が発動する前に、さっさと倒してしまった方が良いが…」

「うん」

「常時発動するタイプの能力だった場合、考えなしに突っ込んだら、それこそ無様に返り討ちだ。どっちを選ぶかだな」

…どっちを選んでも、あまり良い未来が見えない。

「それに、その不意打ち戦法、通用したとしても一回戦だけだぞ。二回戦では確実に通用しなくなる」

言われてみれば。

不意打ちっていうのは不意をつくから不意打ちなのであって。

二度三度と、同じ手は通用しない。

むしろ、こっちが不意打ちをやり返されるんじゃないかと怯えなきゃならなくなる。

「…とはいえ、ダラダラと試合を長引かせて、必ず勝機が生まれるとも限らないからな…。結局は適材適所なんだよな」

「まぁ…うん、そうだな…」

令月やすぐりは、不意打ちが得意だからさ。

対戦相手が能力を発動する前に、素早く不意打ちKOも狙えるけど。

正直俺は、不意打ちなんてやったことないし、出来る気もしないし。

普段やらないことはやらない方が身の為だよなぁ。