神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

バーサーカーの話を聞いただけでも、充分恐ろしかったのだが。

「それより僕は、マッドサイエンティストの方が気になるな」

…ただでさえヤバそうなバーサーカーの話の次に。

今度はまた、更に不穏な言葉がマシュリの口から飛び出してきた。

バーサーカーより気になるマッドサイエンティストって、何だよ。

更に危険そうな匂いがする。怖い。

「マシュリ…。そのマッドサイエンティストっていうのは…?」

マッドなサイエンティストなんだろう?

何がどうマッドなのか教えてくれ。

「魔術や呪術に関する、怪しげな研究をしてる科学者だって聞いたよ」

ふーん、成程。

俺、その人に会ったことないけど、絶対友達にはなれないと思うよ。

危険過ぎて、お近づきになりたくない。

敵に回しちゃ駄目なタイプ。

何なら、味方にしてもおっかなくて、不安になるタイプ。

「で、でも科学者なんでしょ…?研究をしてるってだけで、戦う方は専門じゃないかも…」

おっ、天音が良いことを聞いた。

そうだよ。さっきのバーサーカーと違って、マッドサイエンティストは所詮、ただの研究者なんだろ?

頭は良いけど、戦闘になるとてんで駄目なんじゃないの?

頭良い研究者タイプは、賢い代わりに身体は非力だって相場が決まっている。

…はずなのだが。

「『HOME』でも、一二を争う実力だって聞いてる」

頭も良くて、身体も動かせるマッドサイエンティストとは。

嘘だろ…。頭良い奴は、運動神経は大したことないってのが相場だろ…?

「バーサーカー…。マッドサイエンティスト…。…その事前情報だけで、もうお腹いっぱいだな」

「それだけじゃないよ。ナツキ皇王は、犯罪者だろうと貧民出身だろうと、国籍が違ったとしても、実力があれば誰でも『HOME』にスカウトするから」

「実に多種多様な…多国籍軍と言ったとところか」

ネクロマンサーのルディシアや、人間とケルベロスのハーフであるマシュリさえ、スカウトするくらいだもんな。

そりゃバーサーカーでもマッドサイエンティストでも、実力さえあれば、誰でもウェルカムなんだろう。

その代わり、忠誠心は薄そうだけだな。

ただ使えそうな人間だけ、かき集めてきましたって感じで…。

「他にも、シャーマンとか魔導砲士とか、魔導剣士もいるし…」

「マジかよ…。ただの魔導師じゃねぇの…?」

「ただの魔導師程度じゃ、『HOME』には滅多に入れないから。『HOME』所属の軍属魔導師は、何か特別な能力を持っている人が多いよ」

「…成程…」

問題は、その特別な能力とやらが、俺達には分からないってことだな。

こればかりは、対戦相手の様子を窺って、戦いながら推測するしかない。

対するアーリヤット皇国側は、ヴァルシーナを通して、ある程度俺達が得意としている魔法を把握してるんだから。

やっぱり不公平だよなぁ?