神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

…しかし。

「ミーティングと言いましても…。…各々、最善を尽くす。それ以外にやるべきことがありますか?」

ミーティング開始後第一声に、ナジュがずばりとそう言った。

おい、やめろ。ミーティングの腰を折るな。

そりゃまぁそうなんだけど、もっと他に何かあるだろ。

「対戦相手のことが、少しでも分かってればな…」

「ぶっちゃけ、分かんないんですか?昔の仲間なんですよね?」

ルイーシュが、マシュリとルディシアの二人に向かって尋ねた。

容赦のない聞き方だな。

もう少し言葉を選んで…と思ったけど、遠回しに聞いてるような時間も余裕もないし。

「検討つかないんですか?多分こいつが対戦相手になるんじゃないか、って…」

「さぁ…。色んな奴がいたけど、興味なかったからな」

ルディシアは、どうでも良さそうに答えた。

…まぁ、ルディシアに情報提供を期待するのは無理がある。

興味関心がない相手のことを、ルディシアが覚えているはずがないからである。

しかし、すかさずそんなルディシアを睨み付ける者がいた。

「でも、何人かは知ってるでしょう。知ってることがあるなら言いなさい」

「うっ、イレースさん…」

イレースに鋭い眼光を向けられ、ルディシアは途端に落ち着きをなくし。

「え、えっと…。…そうだ、確か…周辺諸国を騒がせてた賞金首を、ナツキ皇王が『HOME』に召し抱えたって話を聞いたことがある」

記憶を辿って、しどろもどろになりながら、そのような情報を教えてくれた。

ほう。賞金首…?

「それは僕も聞いたことがある。貴族でも何でもない、盗賊上がりのならず者だったらしいけど」

マシュリも知っているらしい。

「賞金首のならず者…。ナツキ様は、そんな奴を『HOME』に召し抱えるのか…」

「懸賞金をチャラにする代わりに、『HOME』に入らせたんだよ。アーリヤット皇王はそういう人なんだ。ならず者だろうがネクロマンサーだろうが…半端者だろうが、自分の得になると思ったら、平気で手元に召し抱える」

…成程。説得力が半端じゃないな。

そいつに利用価値があるなら、盗賊かぶれでも構わないってか。

そして、利用価値がなくなったら…どんなに自分に貢献してくれた部下だろうと、平気で切り捨てるのだ。

「その野蛮な賞金首が、そんなに強いのか?」

周辺諸国を騒がせた賞金首…。いかにも強そうな肩書きだが。

力が強いだけの脳筋野郎なら、勝ち目あるんじゃね?

「さぁ…。でも噂によると、ナツキ皇王に反旗を翻した反政府組織を、一晩で壊滅させたとか…」

「…」

「アーリヤット皇国の領海に海賊船が忍び込んだとき、残らず沈めたって噂もあったね」

「…」

…そのならず者、ヤバくね?

アトラスと似たような雰囲気を感じる。

「ついたあだ名はバーサーカーだって」

まんまって感じだな。何の捻りもない。

対戦相手の事前情報を知って安心するはずが、逆に不安が増してきたんだが?