神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

――――――…王都セレーナを少し歩いて回るだけで、すぐに見つけた。

ネクロマンサー特有の、鼻を突くような独特の腐敗臭を追っていけば、彼の居場所を探すのはそう難しくない。

最悪、もし見つからなかったら、知り合いの野良猫仲間に探してもらおうと思っていた。

が、その必要はなかったようだ。

王都セレーナの外れにある墓地に、ネクロマンサー、ルディシア・ウルリーケがいた。

「探したよ、ルディ」

「…誰かと思ったら、あんたか…」

ルディはちらりと僕を見て、そう呟いた。

罰当たりにも、彼は墓石を椅子代わりにして腰掛けていた。

死体を操るのに、罰当たりも何もないか。

「探してたんだよ。話がある」

「話?またアーリヤット皇国絡み?」

よく分かってるじゃないか。

なら、協力してもらうよ。

「時間がないから、単刀直入に言う。アーリヤット皇国と決闘することになった」

「は?」

「対戦相手になるのは、多分…『HOME』で一緒だった人達だと思う。君も代表になって欲しい。一緒に来て」

「…」

僕は宣言通り、単刀直入に自分の用件を伝えた。

ルディは、しばしポカンとした顔のまま僕を見つめ。
 
そして、堪えきれないといった風に笑い出した。

「あははは…!まさかそんなことになってるとは。一体何がどう転んだら、そうなるのさ?」

「…色々あったんだよ。逐一説明してる暇がない」

アーリヤット皇国に潜入した折、君に手引きしてもらったあの日から。

色んなことが、いくつもあったからね。

全部説明していたら、それだけで日が暮れる。

「羽久はお前のせいじゃないって言うけど、アーリヤット皇国との揉め事は、元々僕達が持ち込んだものだ」

平和だったこの国が、今や戦争をしようかというほど追い詰められているのは。

僕達がアーリヤット皇国から遥々、揉め事の種を持ち込んでしまったから。

僕達がこの国で居場所を作ってもらった。その代償がこれなのだ。

「責任は取らなきゃならない」

「相変わらずクソ真面目なこと考えるよね、あんたって」

当然のことだと思うけど、クソ真面目と揶揄されるのは心外だ。

「でもまぁ…良いよ、いかにも面白そうじゃないか」

愉悦を感じたような表情で、ルディはそう言った。

良かった、ルディの琴線に触れたらしい。

「ルーデュニア側で戦う俺達を見て、あの皇王がどんな顔をするのか…。凄く興味ある」

そう。悪趣味だね。

「じゃあ、付き合ってもらうよ」

「良いよ。…良い退屈凌ぎになりそうだ」

国の命運が懸かった決闘を、退屈凌ぎとは。

不謹慎なんだか頼もしいんだが、紙一重だね。