神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

しかし、シルナは。

「分かってるよ。でも…それでもルディシア君に頼もうと思う」

「…真価を発揮出来ないのに、か?」

「確かに、時間帯は良くないけど…。それ以外の条件は、ルディシア君に適してると思うんだよ」

時間帯以外の条件?

「って、何?」

「あの国…ミナミノ共和国はね、アーリヤット共栄圏に組み込まれる前は、色んな国から攻め込まれたり、逆に攻め込んだり…。戦争の多い国だったんだ」

「…?」

唐突にどうした?

ミナミノ共和国に、そんな歴史が。

その情報が、ルディシアとどう関係して…。

「…あ」

シルナが何を言いたいのか、ようやく理解した。

「…気づいた?」

「戦争が多かった。つまり、あの場所で死んだ人がたくさんいる…。ルディシアが操れる死体がたくさんあるってことだな?」

俺の問いかけに、シルナはこくりと頷いた。

成程、そういうことか。

ルディシアの操る死体。あれは基本的に、現地調達であるそうだ。

ルディシアがネクロマンサーの能力を使ったとき、その近くで眠っていた死体を呼び起こす。

かつて賢者の…イーニシュフェルトの里があった、イーニシュフェルト魔導学院の周辺には、当然たくさんの死体が眠っている。

その為ルディシアは、俺達も見せられた、賢者の死体達を操っていた。

逆に言うと、いくらネクロマンサーの力を使おうとしても、その場に眠っている死体が一体もなかったら。

操れる死体はゼロで、ネクロマンサーとしての力は使えないってことになる。

そう思ったら、結構限定的な能力だよな。

その点、かつて戦争で多くの人が命を落とした、ミナミノ共和国なら。

ルディシアが操れる死体が、山程眠っているはずだと踏んだのだ。

祖国で眠る英霊達を、ネクロマンサーの力で呼び起こすなんて、気が進まないのは百も承知だが…。

…この際、そんな贅沢は言ってられないからな。

「…問題は、あの自由奔放なルディシアが、素直に決闘に協力してくれるか。だが…」

「…それは僕が説得してみせるよ」

そう言って、マシュリは両手をパン、と叩き。

くるりと一回転して、いろりの姿に『変化』した。

「ルディを探してくる」

「何処にいるのか分かるのか?」

「匂いで分かるよ。いつも死体の匂いがするから、あの人は分かりやすいんだ」

成程。

ネクロマンサーが纏う、独特の死体の腐敗臭を辿っていく訳か。

便利だな、マシュリの鼻…。探索魔法代わりじゃん。