「開催地がミナミノ共和国…。おまけに、決闘の審判もミナミノ共和国の軍属魔導師に依頼する、ってよ」

「そう書いてあるね」

ナツキ様から送られてきた、決闘のルール表。

そこには、決闘の審判はミナミノ共和国にいる軍属魔導師が行う、と書いてある。

…危惧していたが、やっぱり…。

「何これ。これじゃあ審判も向こうのグルじゃん」

すぐりが、あっけらかんとそう言った。

それなんだよ。

俺も同じこと考えてた。

「ミナミノ共和国は、言わずと知れたアーリヤット共栄圏の参加国…。つまり、アーリヤット皇国の子分のようなものです」

「子分と言えば聞こえは良いですけど、実質植民地ですよね」

イレースとナジュが、順番に言った。

植民地…は言い過ぎかもしれないが、でも間違ってはいない。

ミナミノ共和国は、アーリヤット皇国の縄張りだ。

わざわざそんなところに赴いて、しかも現地の魔導師を審判役に頼むなんて…。

俺達にとっては、アウェーにも程がある。

「間違いなく、審判は一方的に、アーリヤット皇国側に有利なジャッジをするでしょうね」

「そんな…。ただでさえ不利な状況なのに…。審判が中立じゃないなんて」

「開催地がミナミノ共和国ってだけで、全然中立ではないですけどね」

敵のホームで試合するんだもんな。

周りを見たら、何処もかしこも敵だらけだよ。

観客からブーイングが来ないだけ、気分的にはマシだろうか。

「…開催地がアーリヤット共栄圏なのは予想してたけど、僕はそれ以上に…決闘相手を向こうが指名する、っていう、このルールが気になるよ」

人間形態のマシュリが、ルール表の一項目を指差した。

開催地と日時のインパクトが強過ぎて、危うく見逃すところだった。

マシュリが指差した先には、決闘の対戦相手をどのように決めるかについて書いてあった。

えーと、何々?

決闘は一対一の試合を三回戦まで行い、二本先取した時点で、決闘の勝者が決まる。

成程、一回の試合で決まる訳じゃなく、三回戦まであるのか。

で、先に二本先取した国が勝ち。

一試合で国の命運が全て決まる、という恐ろしいプレッシャーからは開放されたけど…。

しかし、ナツキ様が多少の優しさを見せてくれたのはここまで。

その後に書いてある項目に、俺は思わず目を疑った。

「対戦相手は、アーリヤット皇国が指名する、だって…!?」

「しかも、三回戦とも全部、向こうが対戦相手を指名するらしいですよ」

「…こちらに選択権はないってことか」

おい。これの何処が正々堂々とした決闘なんだ?

不平等にも程があるぞ。