神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

「結局、また学院長と羽久さんですか…。ワンパターンですね」

「うるせぇ」

それで良いだろ。

俺だってな、他の誰かに託すより、自分で行く方が気が楽なんだよ。

ナジュは大丈夫だろうかとか、令月とすぐりは無事なんだろうかとか、マシュリはちゃんと帰ってくるんだろうかとか。

そんな悩みで胃に穴が開くくらいなら、ハナから俺が命を懸けた方がマシ。

「それはそれで、ナツキ皇王も対策していそうなものだけど…」

「ヴァルシーナちゃんがいるからね、余計に…」

シルナがどんな魔法を使うのか、俺がどんな魔法を使うのか。

ヴァルシーナに分かることは全て、ナツキ様にも筒抜けだろうからな。

対策…されてるだろうなぁ。間違いなく。

対する俺達は、対戦相手がどのような人物なのか、全く検討もつかない。

非常に不利な状況と言わざるを得ない。

ヴァルシーナというチクり屋がいなければ、こっちも対等な条件で闘えたんだが…。

…でも、贅沢は言ってられないな。

決闘を引き受けてくれるなら、それだけで有り難いと思わなければ。

果たしてナツキ様は今頃、どのような判断を下しているのか…。

…と、思っていたその時。

「…失礼します」

「…え。クュルナ?」

聖魔騎士団魔導部隊大隊長仲間のクュルナが、学院長室にやってきた。

…しかも、非常に冴えない顔色で。

「つい先程、アーリヤット皇王ナツキ様から、決闘の申し入れについて正式な回答を受け取りました」

「…!」

…来たか。

もう少し悩んでくれるかと思ったんだが、意外と早かったな。

さては即決したのか?

クュルナの、その冴えない顔色を見て、何となくどのような返答を受け取ったのか察してしまった。

「…駄目だったのか…」

ナツキ様には、決闘を受けるつもりなんてない。

交渉も虚しく、両国は国土を巻き込んだ全面戦争に突入する羽目に…。

何なら、こうしている今も、港の爆撃が始まっているのかもしれない。

そうだとしたら、こんな悠長に話し合っている暇は…。

…しかし、俺の予想は外れた。

「いえ、決闘は受けるつもりだそうです」

「…え?」

…受けんの?

なんか…ちょっと、拍子抜けした気分。

てっきり…決闘を却下されたから、冴えない顔をしてるんだと思ってたんだけど…。

どうやら、全面戦争は避けられそう…と思って良いのか?

まだ安心は出来ないが。