神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

すると、ルディシアは。

「弱点はないのかって…。自分の弱点をぺらぺら喋ると思う?」

「別に黙ってても良いぞ。イレースの拳骨を食らいたいならな」

「…」

ルディシアは無言で、この卑怯者め、と言わんばかりに俺を睨んだ。

何とでも言え。

「…ちっ、分かったよ。やりにくいなぁ、もう…」

「喋る気になったか?」

「弱点って言うか…これはネクロマンサーが死体を操る条件なんだけど」

…条件だと?

するとルディシアは、小さなナイフを袖口からくるりと取り出した。

思わず身構えたが、ルディシアは驚いたことに。

ナイフの切っ先を、自分の手のひらに向けた。

…え…?

平然とした顔で、ルディシアはざっくりとナイフで自分の手のひらを切りつけた。

「お前っ…何やってるんだ…!?」

当然ながら、ルディシアの手のひらから、ボタボタと塊のような血が溢れた。

それなのに、ルディシアは平然としていた。

「何って、これが死体を呼び出す条件だよ」

…条件?

さっきも言ってたが、条件って何の…。

「…っ?」

強い腐敗臭がして、二体目、三体目の死体が床を這いずり回っていた。

…きっしょ…。何回見ても慣れない。

夢に出てきそうだ。

「…ふむ、成程そういうことですか」

一人で納得しているナジュである。

お前はルディシアの心を読んで、いち早く理解出来るんだろうが。

俺には何のことかさっぱり分からねぇよ。

すると、シルナも。

「あっ…そういうことか…」

こっちも一人で納得してやがる。

「おいシルナ。どういうことなのか説明しろ」

さっきルディシアが手のひらを切りつけたことと、床で這いずり回ってるゾンビと、どう関係があるんだ?

「君の死体を操る能力は、君の血液を媒介に動いてるんだね?」

シルナが、ルディシアにそう確認した。

…血液を媒介に…?

「そうだよ。この死体達は、俺の血を触媒にして動いてる」

と、ルディシアは説明した。

自分の血液が、死体を使役する為の媒介…。

つまりこのゾンビ共は、ルディシアの血によって動いている。

逆に言えば…。

「ルディシアの血がないと…死体は操れないってことか?」

「うん」

あっさり肯定。

魔導師が魔法を発動するとき、魔力を必要とするように。

ネクロマンサーが死体を操るときには、ネクロマンサー本人の血液が必要だってことか。

…そんなトリックがあったとは。

この死体達、妙に生臭い匂いがすると思ったら…血液の匂いだったのか。

そりゃ生臭い訳だ…。