神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

聖魔騎士団魔導部隊隊舎に迷い込んだであろう野良猫が、解体されて食肉にされていないことを祈りつつ。

俺達は改めて、ルディシアの監禁部屋に足を踏み入れた。

「入るぞ」

部屋の扉を開けると。

そこはもぬけの殻で、ルディシアの姿が見つからない…みたいなことはなく。

ルディシアは大人しく、部屋の中のソファに座り。

ちっこい文庫本を開いて、それを捲っていた。

…おぉ。

めっちゃ大人しいじゃん。

「来たぞ、ルディシア」

「あぁ…?うん、そう」

俺達の姿を見ても、この気のない返事。

敵意を向けられているのではないのだから、以前に比べれば進歩だな。

それにしても、この監禁部屋。

全然監禁部屋ではないな。普通の客間だ。

ソファもテーブルもベッドもあるし、ご覧の通り本も置いてある。

新聞もあるし、飲み物も、お茶菓子まで置いてある始末。

これじゃあホテルみたいなもんだ。

随分「快適」な監禁生活だな。

まぁ、それだけルディシアに抵抗の意志がないってことなんだろうけど…。

「今日はあんた達なのか…。…何?俺の処刑でも決まった?」

薄ら笑いを浮かべて、物騒なことを口にする。

「…そうだ、って言ったらどうするんだ?」

「さぁ、どうもしないよ。死体は俺の味方だから」

あ、そ。

あまりに死体と馴れ合い過ぎて、死そのものさえ恐れなくなったか?

「別に処刑しようってんじゃない。ただ、話を聞かせて欲しいだけだ」

「話…つまり尋問か」

まぁ、そうとも言う。

実際尋問なんだから、否定はしないよ。

「一体何度同じことを喋らされるんだか…。ここの人達にも何回も聞かれたよ」

ここの人達…聖魔騎士団大隊長だろうな。

「これ以上、何が聞きたいって?」

「俺達はまだ聞いてないからな」

「ふーん…」
 
どうやら気乗りしないようだな。

尋問なんて楽しいことじゃないんだから、無理もないけど…。

すると。

「あなたは自分の立場が分かってないようですね」

と、イレースが腕組みをして言った。

「…!」

イレースの姿を見るなり、ルディシアの目の色が変わった。

お?

「ここでは随分生温い待遇を受けているようですが、あなたは今、虜囚の立場。袋の鼠も同然です」

「…」

「洗いざらい喋ってもらいますよ。嘘をついたり誤魔化そうとすれば、痛い目に遭うことも考えておくんですね」

「…はい」

こくり、と頷くルディシア。

すげー素直なんだけど。イレースが言ったら。

やべぇ。イレース連れてきてマジで良かった。

この分なら、包み隠さず何でも話してくれそうだ。

ルディシアが痛い目に遭うこともなさそうだな。