神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

「ごめんね、天音君…。ちょっとの間、学院をお願いね」

と、天音に頭を下げるシルナ。

「大丈夫ですよ。きちんと留守番してます」

…今回ばかりは仕方ないな。

それに天音は保健室の先生でもあるし、突然熱を出した生徒が現れても、すぐに処置してくれるだろう。

そういう意味でも、天音が残ってくれるのは有り難い。

「天音さんはそもそも、尋問官には向いていませんしね。あなたの弱腰な態度では、舐められてしまうのがオチです」 

「うっ…」

イレースは、なんとも身も蓋もないことを言った。

あのな…そう言ってやるなよ。

天音の方も自覚はあるらしく、言い返せないようだった。

天音は生来優しいからな。

人を問い詰めたり、問い質したり…するのは向いてない。

やはり、今回は俺達に任せてもらおう。

…あとは。

「問題はあいつらだな…」

「…あいつら?」

「令月とすぐりだよ」

「…あー…」

姿は見えないが、確実にこの会話を何処かで聞いているであろう、二人の元暗殺者の名前をあげると。

天音は、納得したような声を出して頷いた。

絶対いるぞ、あいつら。床下か天井裏か、はたまた壁の中かもしれない。

ネズミみたいな奴らだ。

「絶対ついてくると思うぞ」

「うーん…。だろうね…」

大人達が集まってたら、自分らも大人ですみたいな顔して、当たり前のようにやって来るからな。

お前らは子供だっつーの。

ルディシアみたいに、見た目は子供だけど実は年齢は大人、という訳じゃなく。

あいつらは、見た目も子供だし中身も子供だ。

ただ、性格が子供とはかけ離れてるってだけで…。

すると、イレースが。

「勝手にしなさい。どうせ『ついてくるな』と言ってもついてくるんですから」

…またしても、身も蓋もない。

「いや、でもな…。一応…」

「ノミやシラミのようなものです。私達の行くところにはついてきたいんでしょう。そんなことにかかずらっている時間が惜しい」

シラミって。

シラミは放置したくないだろ。

しかし、イレースは全く意に返すことなく。

「そろそろ時間です。行きますよ」

「あ、う、うん…」

結局元暗殺者組は放置か。

まぁ、俺あいつらが今何処に潜んでいるのかも分からないし。

イレースの言う通り、ついてくるなと言っても絶対ついてくるだろうしな。

止めても無駄だから、もういっそ無視しとけってことなんだろうが…。

…分かったよ。今回はイレースの言う通り、好きにさせよう。

それに、ネクロマンサー騒ぎが勃発したとき、令月達の力も随分貸してもらったしな…。

あいつらも全く無関係じゃないのだから、ルディシアの話を聞くくらいの権利は…。

…やっぱりないと思うけど、あるってことにしておこう。

「それでは天音さん、私の代わりに小テストの採点、宜しくお願いしますね」

出掛けに、お使い頼むみたいなノリで仕事を頼むイレースだった。

やっぱりやらせるのかよ。

「うっ…わ、分かった…」

「ちゃんと辛めに採点してくださいよ。ついでに、明日の『炎魔法基礎Ⅱ』で行う小テストの作成もしておいてください」

どんどん注文が増えていく。

小テスト多過ぎだろ。色んな科目で毎日やってる。

「…分かりました…」

遠い目をしながらも、嫌ですとは言わない天音。

偉いぞ。