神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

「言っとくが、来るなって言っても無理矢理ついていくからな」

こっそり一人で行こうとしても無駄だぞ。

最悪、時魔法でシルナの時間を止めてでも一緒に行く。

舐めるなよ。俺の執念を。

「しつこい男は嫌われますよ」

「うるせぇっての」

人の心をみだりに読みまくる奴も、同じくらい嫌われるぞ。

「でも…どうやら、羽久さんは一歩たりとも引く気はないようですよ」

俺の心中を読んだナジュが、シルナにそう言った。

「学院長も、自分から罠に引っ掛かると言って引かないし…。頑固者揃いですね、うちの学院の教師陣は。イレースさんもそうだし…」

「…何かおっしゃいました?」

ギロッ、とナジュを睨むイレース。

「…って、天音さんが言ってました」

「えっ、僕…!?」

無関係の天音を巻き込むなって。 

だが、ナジュの言っていることは、とにもかくにも真実だった。

俺も引かないし、シルナも引かない。頑固者が二人。

シルナがナンセイ民主共和国への呼び出しに応じるって言い張るのは、俺が折れた。

なら、シルナも俺が同行することに対して、折れてもらうぞ。

「…うむむむ…」

と、難しい顔で唸ってから。

「…分かった。じゃあ、羽久も一緒に行こうか」

苦笑気味に笑って、今度はシルナが折れた。

「君には勝てないよ、羽久…」

俺が我儘言ったみたいに言うな。

最初にナンセイ民主共和国に行きたいって我儘言ったのは、お前なんだからな。

俺はそれに付き合ってやろうとしてるんだから、むしろ感謝してくれ。

「一緒に行こう。ナンセイ民主共和国に」

「あぁ。それで良い」

残念だったな、令月とすぐり、それからマシュリ。

お前達が変装、及び『変化』する必要はないぞ。

影武者じゃなくて、ちゃんと本人が行くからな。

向かった先で、ヴァルシーナが罠を張っていたとしても。

二人で引っ掛かるなら、何も怖いことなんてないよ。

どんと来いだ。

「そうと決まれば、早速準備するよ」

「そうだね。…イレースちゃん、私の留守中、学院をお願いね」

「問題ありません。学院の経営において、私は普段から、パンダ学院長を戦力の一つに数えていませんから」

「…」

…残念だったな、シルナ。

でも言い返せない。事実だから。

学院の方は、イレースに任せておいて大丈夫そうだ。