神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

思い出してみる。あのルディシアという子供。

…いや、子供なのは見た目だけで、年齢は相当行ってるらしいんだが。

こっちは最初、あいつがネクロマンサーだってことを知らなかった。

ネクロマンサーという存在そのものも、都市伝説みたいなものだと思っていたのに…。

まさか、本当に存在したとはな。

俺達が後手に回ってしまったのを良いことに、散々生意気言って、散々好き勝手してくれたものだ。

万策尽きたか、と思われたところを…イレースが救世主となってくれた。

まさかゲンコツ一発で、全てを解決するとはな。

イレースのゲンコツが世界を救うとは、誰も思ってなかったよ。

何と言うか、ルディシアにとってはイレースのゲンコツが青天の霹靂だったようで。

それは俺達にとってもそうだったんだけど。

今まで、好き勝手やって大人を困らせるのが当たり前だったのか。

逆に、あれほどストレートに大人に説教されるのは、多分初めてだったんだろう。

だから多分…あのイレースのゲンコツで、ルディシアの「目が覚めた」と言うか。

ルディシアの方も拍子抜けしてしまって、これ以上抵抗する気がなくなってしまったんだと思う。

お母さんにビンタされたようなもん。

そんなお仕置きが効くんだから、ルディシアはやっぱり、見た目通り子供みたいな性格してるんだろう。

これまで、まともな大人に接してこなかったせいで、余計子供っぽい性格のまま成長出来なかったんだろうな。

…ともかく。

あのイレースパンチのお陰で、ルディシアはイレースの前では大人しくなる。

シュニィ達には喋らなかったことも、イレース相手なら喋るかもしれない。

必要とあれば、イレースパンチ二発目も有り得る。

ということで、今回はイレースにも同行してもらった方が良いだろう。

すると、俺の心を読んだらしいナジュが。

「ネクロマンサーを一撃で黙らせるイレースさんの鉄拳…。怖っ。多分、前世が鬼か何か、」

「…何かおっしゃいましたか?」

「って、天音さんが言ってました」

「えぇっ!?」

…まーた天音のせいにしてるよ。

ルディシアほどじゃないが、お前も大概イレースの拳骨が必要なようだな。

一発もらったら大人しくなるだろう。

「…それはともかく、残ってもらうなら天音さんでしょうね」

と、イレースが言った。

…うーん。そうなるよな、やっぱり…。

シルナは勿論必要だし、俺はシルナから離れるつもりはないし。

ナジュは尋問官要員に必要だし、イレースも同じく…。

…ってことは消去法で、残るのは天音だけだ。

こういうとき、天音にはしょっちゅう留守番ばっか申し付けて、本当に申し訳ない。

しかし。

「うん、分かった。良いよ」

少しも嫌な顔をすることなく、天音はそう言った。

こういう天音の優しさに、毎度救われてるよ。