神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

俺とシルナは、並んでフユリ様の正面に腰を下ろした。

ルーデュニア聖王国の女王陛下と、椅子を並べて座っているなんて。

あまりの場違い感に、落ち着かなくてむずむずする。

本来俺は、フユリ様みたいな身分の高い人に謁見するような立場じゃないからな。 

貴族でもなければ、政府のお偉方でもないし…。

ただの、魔導学院の教師でしかない。

そんな俺が…いかに、シルナの付き添いであろうとも。

フユリ様の前に座っているなんて、そりゃ場違いだろうよ。
 
その点、シルナも俺と大して変わらない立場なはずなのに。

シルナの方は、ちっとも緊張した様子はなかった。

…シルナは、フユリ様がまだ赤ん坊の頃から、ルーデュニア聖王国を影から支えてきた。

そんなシルナにとっては、フユリ様は親戚の娘さん同然なのかもしれないな。

それは分かるけど、お前、失礼なことだけは言うなよ。

「…それで、フユリ様。今日は…」

シルナの方から促すと、フユリ様は頷いて、単刀直入に話を始めた。

「今、ルーデュニア聖王国を…そして、世界を騒がせている騒動についてはご存知ですよね」

…それは。

ご存知になりたくなくても、俺達も渦中にいるようなものだからな。

勿論知ってるよ。

「はい。…フユリ様は大変でしたね。長い間ミナミノ共和国で…」

「…えぇ、そうです」
 
「お身体の方…大丈夫です?」

フユリ様はつい最近まで、緊張状態のミナミノ共和国に閉じ込められていた。

体調を崩していないかと、シルナは気遣ったが。

フユリ様は、心配要らないとばかりに首を横に振った。 

「私は平気です。お気遣い感謝します」

…何日、何週間もミナミノ共和国に閉じ込められて、平気なはずがない。

それでもフユリ様は、弱みを見せることが出来ない。

特に今は。

今弱みを見せたら、あっという間にナツキ様に付け込まれるだろうから。

国家元首というのは大変だ。

イーニシュフェルト魔導学院の学院長…よりも、ずっと重い肩書きだ。

そんなご大層な役目を、こんな少女のように見える人間が、両肩に背負っているんだから。

フユリ様の心痛は、俺達には推し量ることも出来ない。

…ましてや、今回の件を仕組んだのは他でもない、自分の兄なのだから。

余計、心を痛めているに違いない。