神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

「よく来てくれましたね。シルナ学院長。それに羽久・グラスフィア先生」

王宮に辿り着くと、俺達は待ってましたとばかりに、フユリ様のいる応接間に通された。

国賓並みの待遇に、思わず腰が引けてしまいそうである。

フユリ様にとって俺達は、国内に数多くある魔導学院のいち教員でしかないはずなんだが。

「突然お呼び立てして、申し訳ありません」

それどころか、ぺこりと頭を下げられる始末。

女王に頭を下げられるなんて、あまりに畏れ多い。

「そんな、気にしないでください。呼んでくれたら、いつでも駆けつけますよ」

と、笑顔で応えるシルナ。

随分とノリが軽いけど、お前、目の前にいるのがルーデュニア聖王国の女王だってこと分かってるか?

「あ、そうだ。これ、手土産。私のお気に入りのチョコレート専門店で買ってきたんですけど」

やっぱり、どうしてもそれを渡さずにはいられないらしい。
 
相手はルーデュニア聖王国の女王だぞ。

一般人にとっては、なかなか手の届かない高級チョコでも。

フユリ様にとっては、そこらのスーパーで売っている板チョコと変わらないだろう。

しかし。

「ありがとうございます。有り難くいただいておきます」

フユリ様は優しいから、笑顔でシルナの手土産を受け取ってくれた。
 
この器の大きさよ。

「いえ、そのようなものを受け取る訳にはいきません」って言っても良いんだぞ。

シルナが年寄りだから、気を遣ってくれてるのかも。
 
きっとそうだな。

「…羽久が私に失礼なこと考えてる気がする…」

「…うるせぇ」

ゲシッ、とシルナの足を蹴っ飛ばしておいた。

フユリ様の前だぞ。

下らないやり取りしてる場合じゃないだろ。

ましてや、俺は呼ばれてすらいない訳で。

「どうぞ、お二人共お掛けください」

しかしフユリ様は、俺に出ていけとは言わなかった。

それどころか、俺にも椅子を勧めてくれた。

…俺もいて良いってことか?

まぁ、駄目だと言われても居座るけどな。

ここまで一緒に来たのに、俺だけ門前払いは遠慮したい。

「…確認しておきますけど、俺も一緒で良いんですよね?」

俺は、フユリ様にそう尋ねた。

邪魔だなと思われてたら心外だし。

しかし。

「勿論です、羽久先生。あなたの意見も聞かせてください」

フユリ様は当然のように頷いた。

そうか。それなら良かった。

じゃあお言葉に甘えて…俺も同席させてもらおう。