皇宮までの道案内を務めてくれるのは、勿論。

「こっち。皇宮の地下にある秘密通路に繋がってる」

猫の姿に『変化』した、マシュリである。

曰く、猫の姿の方が夜目が利くのだとか。

彼にとって、皇宮は古巣みたいなものだからね。

道案内としては完璧だよね。

「ここから先は、監視の目もある。くれぐれも姿を見られないように」

「ふーん。誰に言ってるの?」

「…そうだったね」

君の方こそ、猫の姿だからって、迂闊に人目につかないように気をつけてね。

素人の目につくとは思えないが、警戒すべきなのは…。

「君と同じ、皇王直属軍…。『HOME』だっけ?その人達に出くわすのは避けたいね」

多少戦闘になるのは、やむ無しかもしれないが。

『HOME』の構成員と、直接ドンパチ遣り合うのは得策じゃない。
 
負けることを心配してるんじゃないよ。

僕と『八千歳』が組んで、勝てない相手はいないと思ってるから。

そうじゃなくて、その戦闘音を聞きつけて人が集まるのが不味いってこと。

あくまで今回の僕達は、隠密行動が基本だから。

誰が相手であっても、人に姿を見られる事態は避けたい。

「どうかな。僕も…『HOME』に所属している全ての構成員を知ってる訳じゃないから…」

そうだったね。

今のところ僕達も、ネクロマンサーと、人間と魔物のハーフが所属していたってことしか知らない。

多分他の構成員も、同じくらいインパクトがあるんだろうな。

何だろう?

「催眠術師とか猛獣使いが出てきたとしても、僕は驚かないよ」

「それくらいなら、むしろかわいーんじゃない?マッドなサイエンティストとか、バーサーカーとか出てくるかも」

成程、『八千歳』の言う通りだね。

それはそれで、ちょっと戦ってみたくもあるけど。

今回はお預けだね。

本当はどんな奴がいるのか、出てきてからのお楽しみ。

「当然、魔導師もいるんだよね?」

「いるよ」

…だよね。

「にしても、変な人だよねー。魔導師を抑圧する条約を、自分から率先して提案してる癖に…。自分の周りの護衛を固めるのは魔導師な訳?」

皇宮に向かう地下通路を歩きながら、『八千歳』が呟いた。

それ、僕もずっと思ってた。

根っからの魔導師嫌いかと思いきや、普通に魔導師を重用してるんだよね。

何だか矛盾してるって言うか。

「ナツキ皇王は別に、魔導師排斥論者じゃないよ」

と、マシュリが答えた。

「ただ、魔導師は危険な存在だから、国によって管理しなきゃいけないって思ってるだけ」

国によって管理…魔導師を。

ふーん。

「つまり、魔導師を御しきれる自信がないってことだね」

自分に反旗を翻す恐れがある存在を、野放しにしておくのが怖いんだ。

意外と小物なんだね。アーリヤット皇王って。