神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

…などという話をしながら、積み荷置き場に忍び込むこと4日。

そろそろサミットも閉幕して、アーリヤット皇王は国に帰ってきている頃だろう。

そして僕達の長い船旅も、無事に終わった。

アーリヤット皇国の港に着くと、僕達は再び、リンゴの木箱の中に潜んで、積み荷と一緒に入国。

マシュリは可哀想だったから、顔を覆う手拭いを貸してあげた。

これで少しはマシになると良いのだが。

ようやく無事に船から降りて、周囲から人が去るのを辛抱強く待ち。

深夜、荷降ろし作業を終えた作業員達が帰ってから。

僕達は、リンゴを掻き分けて木箱から出た。

ふぅ。

僕に続いて、『八千歳』とマシュリも木箱から這い出てきた。

『八千歳』はさすがに、余裕の表情だったが。

匂いにやられたらしいマシュリは、手拭い越しでも分かる不機嫌顔だった。

「お疲れ様」

「…食べ物の匂いと海の匂いで、鼻が曲がりそうだよ」

手拭いで覆っててもこれなんだから、鼻が良いって本当に大変なんだね。

僕と『八千歳』は普通の人間でも良かった。

「悪いけど、鼻曲げてる暇ないよ。さっさとここから離れないと」

『八千歳』の言う通り。

何とかここまで、積み荷に紛れて潜り込めたけど。

ここからは、僕達の身を隠してくれる木箱なんてない。

港の関係者に、姿を見られるのも不味い。

急いで離れた方が良いだろう。

「道案内、宜しく頼むよ」

「…分かってる。まずは皇都に向かおう」

皇都。ルーデュニア聖王国で言う、王都セレーナみたいな都市だね。

そして、そこにアーリヤット皇王がいるのだろう。

「近いの?徒歩で行ける?」

「僕は行けるけど、人間には無理だよ」

それじゃ、仕方ないね。

「王都に向かう列車がある。まずは駅に行こう」

列車で行くのか。まぁ、常套手段だね。

…え?アーリヤット皇国の通貨なんて持ってるのかって?

勿論持ってないよ。

でも、律儀に切符を買って、一等列車に乗って優雅な旅…なんて、する気はないから。

ようは、どんな手段を使ってでも、姿を見られずに皇都に辿り着けば良いんだろう?

それなら簡単だよ。

「始発の皇都行きの列車に、こっそり忍び込もう。それで皇都まで行けるよね?」

「…話が早くて助かるよ」

前職の関係で、そういうことには慣れてるからね。

遺憾なく、その経験と才能を発揮するとしよう。