――――――…その頃、イーニシュフェルト魔導学院では。





「羽久…。羽久、チョコクランチドーナツあげるよ」

「…あのな、シルナ。もう生徒はほとんど来ないんだから、大量にチョコ菓子買うのやめたら?」

最近、放課後に学院長室を訪ねる生徒は、めっきり少なくなってしまった。

そうだというのに、このシルナと言ったら。

全生徒に配るつもりなんだろうかと思うくらい、大量にチョコ菓子買ってくるんだよ。

で、毎回余らせて、翌日の生徒達の朝食のデザートになってる。

朝からそんな、甘ったるいチョコたっぷりのドーナツなんか食べたくないよ。

シルナは朝だろうが夜だろうが、いつでも何処でもチョコばっか食ってるけど…。

それはシルナの味覚がイカれているからであって、一般人である俺達にはキツい。

「だって、もしかしたら何かが起きて、突然生徒達がいっぱい訪ねてきてくれるかもしれないでしょ?」

などと供述しており。

何かって何だよ。何も起きねーよ。

「いつ生徒達が会いに来てくれるか分からないでしょ?だから、常にたくさんお菓子を用意して…」

「自分が食べたいだけだろ…?」

「今日はもらいもののチョコプリンもあるよ!」

話聞いてないし。

ドーナツにプリンか…。…重いな…。

どれもこれも濃厚なチョコレート味で、正直、見ただけでお腹いっぱい。

しかし、シルナは当然、そんなことは意に介さず。

「じゃあホットチョコレート用意してくるね〜」

飲み物に、更に濃厚甘々なホットチョコレートまで。

マシュリじゃないけど、匂いだけで遠慮したくなってくる。

…と、思ったそのとき。 

「学院長先生っ…」 

「失礼しますっ…!」

焦った顔の生徒が数人、突然学院長室にやって来た。

え?