ひとまず、マシュリが勝手にアーリヤット皇国に帰ってしまう心配…は、ほぼなくなった。

あとはルディシアだが…。

「ルディシアは、勝手にアーリヤット皇国に帰るんだろうか…?」

あいつは行動が読めないから、何とも言いようがない。

つーか、今何処に行ってんの?

「分からない…。もし帰ろうとしているなら、止めないと」

もし勝手なことしようとしてたら、またイレースに拳骨食らわせてもらおう。

多分、あいつはそれで大人しくなるはずだ。

「ルディシアさんのこともそうですが…。これから私達がどうするべきか、考えないといけませんね」

と、シュニィ。

…そうだな。

「…つっても、俺達に何が出来るよ?」

両手を頭の後ろで組んで、キュレムがそう呟いた。

「キュレムさん…」

「フユリ様の代わりなんて、誰にも出来ないだろ。例え学院長でも。『女王でもない癖に黙ってろ』って言われるだけじゃん」

…それは…。

…まぁ、そうなんだけど。

「あの人が帰ってこない限り、俺達に出来ることなんてたかが知れてるだろ」

その通り過ぎて、ぐうの音も出ない。

が、それじゃあ駄目なんだよ。

「だからって、黙ってる訳にはいかんだろ…」

ナツキ様の言いなりになって黙ってたら、彼の嘘八百が真実だと認めるようなもの。

例え形だけだとしても、鼻であしらわれるだけだとしても、否定はしてみせないと。

「そうだね…。私の名前と、それから聖魔騎士団団長の…アトラス君の名前を使って、正式にアーリヤット皇国に抗議しよう」

と、シルナ。

…うん。

現状俺達に出来ることと言ったら、それくらいだろうな。

まぁ、フユリ様御本人じゃない俺達が、いくら何を言って抗議しようとも。

ナツキ様は勿論、他のサミット参加国の代表達も、全く耳を貸さないだろう。

それは分かってるけど、でも何もやらないよりはマシだから。

「フユリ様が戻ってくるまで、最善を尽くそう」

「…やれやれ。困ったことになったな…」

全くだよ。

国を跨いだ壮絶な「兄妹喧嘩」に…巻き込まれるこっちの身になって欲しいものだ。