神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

さっきまで、絶望的な状況に陥っていたが。
 
こちらにはシルナがいると思ったら、俄然何とかなりそうな気がしてきた。 

いくら策士なナツキ様と言えど、シルナに比べたら子供の浅知恵だ。

積み上げてきた年季の違いってものを、その無駄に重ねてきた年齢は伊達じゃないってことを、ナツキ様に教えてやれ。

「…さっきから地味に、羽久が私に失礼なこと考えてる気がするのが気になるけど…」

「気にするな」

「そうだね。まずはこの状況を何とかしないと…。こちらもすぐに声明を出そう。ルディシア君とマシュリ君が、この通りピンピンしてるってことを…」

全世界の人々に知ってもらおうぜ。

人質?は?何それ美味しいの?ってさ。

「その為に、まず…」

と、シルナが言いかけたそのとき。 

「会議中、失礼致します…!シュニィ副団長殿…!」

会議室に、魔導隊士の一人が飛び込んできた。

その青ざめた表情に、誰もが顔を強張らせた。

「どうしました?フユリ様に何か動きが?」

「い、いえ…。フユリ様ではなく…サミットに参加中のアーリヤット皇王様が…」

ナツキ様が何だって?

これ以上、何をやらかしたんだ。あの人は?

「親魔導師国家であるルーデュニア聖王国を、公然と批難すると共に…。あ、新たな条約を提案し、その場で諸外国に批准を求めたと…」

「…何ですって…?」

…ごめん、ちょっと言ってることの意味が分からない。

多分、報告している魔導隊士も、頭の中パニックなんだろう。

更に状況が悪くなってるんだってことは分かる。

「落ち着いてください。一体何事ですか?新しい条約って…?」

「る、ルーデュニア聖王国にも送られてきました。アーリヤット皇国を中心として、各国に条約の批准を求めています」

そう言って、報告に来た魔導隊士は、これまたコピーした文書をシュニィに手渡した。
 
あまりに力を込めて握っていたせいか、文書に皺が寄ってしまっている。

しかし、誰もそんな瑣末事に気を配る者はいなかった。

「な…何なんです、これは…」

その文書を読んで、シュニィは青ざめていた。 

「ちょ、ちょっと。読ませて」

「俺も」

シルナと俺は、シュニィから文書を受け取り。 

その内容を読んで、これまた腰を抜かしてしまった。

さっきまでの報告にも、充分驚いたもんだが。

こちらもまた、負けず劣らずのインパクトがある。