神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

何もかも全て、ナツキ様の手のひらの上。  

フユリ様は嵌められたのだ。

ミナミノ共和国がフユリ様を招待したのは、国境を封じてフユリ様をミナミノ共和国に閉じ込める為。

治安や天候の悪化云々は口実で、何としてもフユリ様をサミットに参加させない為、足止めをする為だったのだ。

そしてナツキ様は、フユリ様の不在を良いことに。

当初の予定通り、嘘八百の声明を公式に発表した。

…何の為にそんなことを?

決まってる。

「そこまでして…フユリ様を貶めようと…」

憎っくきフユリ様を、世界中から非難の的にさせ。

彼女の面目を損ない、失脚させる為に。

このような、大それた計画を実行したのだ。 

…本当に、よくやってくれたものだ。

まんまとナツキ様の罠に嵌まってしまった自分達が、何とも情けないが。

こうなってしまったからには、覚悟を決めるしかなさそうだ。

「…シルナ。それにシュニィ。ルーデュニア聖王国も、すぐに公式の声明文を出そう」

これ以上まごついていたら、ナツキ様の嘘八百声明が事実だと認めるようなものだ。

こちらは何も疚しいことはしていない。それどころか、悪いのは嘘をついているナツキ様の方だ。

何も恥じる必要はない。やっていないことはやっていないと、堂々と言い返してやれば良い。

フユリ様がいないから、俺達が黙ってるしか出来ないと思ったら大間違いだぞ。

フユリ様の代わりに、一切の事情を全て把握している俺達聖魔騎士団が。

そして…フユリ様の信頼を受けたシルナが、代理として釈明を行う。

ナツキ様の言い分が嘘っぱちである…どころか。

ナツキ様はシルナの命を狙って、自分の膝下の部下を刺客として送りつけてきたんだと。

むしろこっちは被害者なのだと、全世界中の皆さんに分かってもらうのだ。

勿論、フユリ様御本人の声明でない以上、信憑性を疑われるだろう。

でも、フユリ様が本国に帰還するまでの時間稼ぎくらいにはなる。

ミナミノ共和国に留め置かれているとはいえ、永久にフユリ様を軟禁することは出来まい。

治安と天候(笑)が回復次第、すぐに戻ってこられるはずだ。

そしてフユリ様が戻ってきたら、本格的に抵抗開始。

だから、それまで何とか凌げば良い。

「フユリ様に代わる発言権があるのは、お前だけだ。シルナ」

フユリ様の信頼を受け、ルーデュニア聖王国建国時からずっと、この国の屋台骨を支え続けたのは誰か。

本当は王族よりも、誰よりもこの国を守る為に貢献し、力を尽くしたシルナなら。

ルーデュニア聖王国のピンチを、何とか救えるはずだ。

俺達もその為に、出来る限りのことはしよう。

この場にいる全員が、すがるような眼差しでシルナの方を向いた。

「…うん、そうだね」

シルナは、いつものふざけた態度とは裏腹に。 

毅然とした眼差しで、皆の期待に応えた。

「フユリ様がお戻りになるまで、私達でこの状況に対処しよう」

…さすがシルナ。

これでも、頼りになるときはなるんだぞ。たまにはな。