神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

「フユリ様はどうして、ミナミノ共和国に留まってるんだ?もうサミットが始まってるのに…」

サミット前に戻ってくる予定じゃなかったのか。

「戻ってこられないんです。現在、ミナミノ共和国はあらゆる出入国を禁止しているんです」

…は?

これには、俺もシルナも顔を合わせて目を見開いた。

…事実上、国境封鎖?

「な、何で…?」

「これは、ミナミノ共和国の公式見解ですが…」

そう前置きしてから。

シュニィは、フユリ様が戻ってこられない理由を説明してくれた。

「この時期、ミナミノ共和国周辺の海域は酷く荒れていて…。危険だからという理由で、海路も空路も封鎖されてしまって…」

何じゃそりゃ?

要するに、天気が悪いから船も飛行機も出せませんって?

「いや、でも入国したんだろ…?」

天候が悪いのは、初めから分かっていたはずだ。

それでも、フユリ様がやって来るまでは海路も空路も通っていた。

「はい。ですが…フユリ様が滞在している間に…。更に天候が悪くなってしまったから、と」

こじつけにも程があるだろ。

フユリ様がミナミノ共和国に到着して、帰るまでのたった数日の間に。

国境を封鎖しなければならないほど、突然天候が悪化したと?

絶対嘘。

「それに…運悪く、フユリ様が首都に到着した直後に、国内の反政府勢力が首都でテロを起こしたらしくて」

おいおい。

天候の悪化に加えて、首都でテロ?

どうなってんだよ、ミナミノ共和国は。

「治安の悪化に伴って、あらゆる出入国を禁止することに決めたようです」

「そんな…。一般の国民ならともかく、フユリ様は大事な賓客だろ…?無責任に国内に留め置くなんて…」

「はい…。結局、あれこれと理由をつけられて、フユリ様はサミットに参加出来ず…。急遽代理として、外交官の一人がサミットに参加しているのですが…」

…フユリ様本人じゃない、間に合せで突然選ばれた代理の外交官に、何が出来るだろう。

ナツキ様に根も葉もない批判を受けようと、まともに言い返すことも出来ず、右往左往している様が目に浮かぶ。

無理もない。

各国の代表達、そのそうそうたる顔触れの中に、一外交官に過ぎない身分が混じったら、気圧されるのは当然だ。

で、結局ルーデュニア聖王国は何も言い返せず、ナツキ様に言われっぱなし…。

「…確かミナミノ共和国は、アーリヤット共栄圏の参加国だったな」

「えぇ、そうです」

アーリヤット皇国を中心とする国家連合、通称アーリヤット共栄圏。

ルーデュニア聖王国は勿論参加していないが、ミナミノ共和国は昔から…アーリヤット共栄圏の一部。

つまり、ミナミノ共和国とアーリヤット皇国はグル。

最早、疑いようがなかった。