神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

まさか。

世界主要国サミットに、ルーデュニア聖王国の代表が不在とは。

シルナなしに職員会議開くようなもんだぞ。

いや、それは言い過ぎかもしれないが…。

でも、あながち誇張とも言えない。

ルーデュニア聖王国は、世界でも有数の経済大国。

そのルーデュニア聖王国なしに、会議を行っているのか…。

成程、ナツキ様が好き勝手な声明を発表出来た訳だ。

フユリ様がいないのを良いことに…。

「何でフユリ様は、ミナミノ共和国に…?」

ルーデュニア聖王国と特別仲が良い訳でもない。

それどころか…こういう言い方は良くないが、ルーデュニアに比べたら、ミナミノ共和国はそれほど治安の良い国ではない。

何故このタイミングで…。

「サミット開催の直前に、ミナミノ共和国から公式に招待を受けたんです」

…とのこと。
 
「招待…?」

「はい…。私も後になって知らされたんですが…。このような文書が、ミナミノ共和国から…」

そう言って、シュニィはコピーしたものらしい文書を、俺とシルナに差し出した。

かいつまんで、ざっと読んでみたところ。

元々ミナミノ共和国は、魔導師に対して偏見の強い国である。

しかし、この度ミナミノ共和国では、国内の政権交代に伴って、これまでの方針とは一転。

魔導師に寛容な国策を執り行うことを決定した。

で、その一環として、世界でも有数の魔導師大国であるルーデュニア聖王国の政策を習いたい。

ひいては、これまであまり仲の良くなかったルーデュニア聖王国とも、改めて親密な友好関係を築きたい。

そして、新たに就任したミナミノ共和国の代表として、ルーデュニア聖王国の女王、フユリ様に直々に挨拶したい。

どうかサミットの前に、時間を作って訪問してくれないだろうか。

…というのが、文書の内容だった。

要するに、仲直りしに会いに来てくれ、ってな訳だ。

本気で仲直りしたいなら、自分が来いよ。

とは思ったが、このような文書が公式に送られてきて、フユリ様としても無視は出来なかったのだろう。

「それで…フユリ様がミナミノ共和国に…」

「はい…。挨拶を済ませて、すぐに戻ってきてサミットに備える予定だったそうですが…」

「まだミナミノ共和国に残ってるんだな?」

「そのようです」

…何だか胡散臭い、この文書を受け取って。

これまで魔導師を厳しく取り締まっていた癖に、突然の変わり身に、怪しみながらもミナミノ共和国を訪問した。

あわよくばフユリ様も、これを機にミナミノ共和国と友好関係を築きたい、という思いもあったのだろう。

いかにも罠っぽく見えるが、国同士の礼儀を果たす為に、彼女はミナミノ共和国を訪問した…。

そして、帰ってこられなくなってしまったのだ。