神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

「分かった、すぐに行く」

何があったのか、今のところ詳しくは分からないが。

クュルナの様子を見たところ、ルーデュニア聖王国が危機を迎えていることは間違いない。
 
俺達に出来ることがあるなら、何でもしよう。

すると。

「僕も一緒に行くよ」

マシュリが自ら、そう名乗り出た。

…気持ちは分かるが…。

「良いのか?マシュリ…。アーリヤット皇王…ナツキ様は、お前のことを…」

「…分かってる。でも、彼は僕の名前を出したんだよね?」

…さっき、クュルナがそう言ってたな。

ルディシアとマシュリの身柄がどうのって…。

つまり、マシュリにも関係がある話なんだろうが…。

ナツキ様はこれまで、マシュリのことを散々利用してきた。

役目を果たさないなら無価値、だなんて戯言で、マシュリを脅し続けてきた。

そんな相手に、これ以上自ら関わりたくはないはずだ。

しかし、マシュリは。

「自分の問題だから。…けじめくらいは、自分でつけるよ」

「…そうか」

そこまで覚悟を決めているなら、俺も止めないよ。

是非、マシュリも一緒に来てくれ。

本当にナツキ様が絡んでいるなら、少しでも彼の人となりを知っている助っ人がいてくれたら、心強い。

「…ということは、私が学院の留守を預かる必要がありそうですね」 

腕組みをして、イレースが言った。

…そうなるな。

イレースやナジュや天音達にも、一緒に来てもらいたいのは山々なんだが…。

さすがに、一人残らず教員が学院からいなくなったら、あまりにも無防備。

何が起きたのか分からない以上、まずは俺とシルナとマシュリで、聖魔騎士団に行って。

そこで何があったのか把握してから、学院に帰ってイレース達に話そう。

もどかしい思いをさせてしまうが、俺達が帰ってくるまで学院に残ってもらいたい。

「ごめんね、イレースちゃん…」

「別に構いませんよ。あなたがいない間に学院の風紀を取り締まるのが、私のライフワークですから」

シルナ、愕然。

やばいな。シルナが不在の間に、イーニシュフェルト魔導学院が鬼教官のラミッドフルス流に染められていく。

良いんじゃないのか?ただでさえ、シルナの方針のもと、イーニシュフェルト魔導学院は規範や校則が「緩い」から。

時たまでも、イレースにきっちり締めてもらうくらいが釣り合い取れるってもんだろう。

「…早く帰ってこよう、羽久。用事を済ませて急いで帰ろう!私の学院が…イレースちゃんに乗っ取られてしまう…!」

そんな深刻そうな顔しなくても。

イレースに学院の留守を預けるってのは、そういうことだよ。

それよりも。

「急ごう、クュルナ。皆のもとに案内してくれ」

「はい、分かりました」

俺とシルナ、マシュリの三人は、クュルナと共に聖魔騎士団魔導部隊隊舎に向かった。

ったく、マシュリも猫の集会どころじゃないな。