「何だか色々…迷惑をかけたみたいで…」

…あのなぁ。

何度も言ってるだろう。これはお前の責任じゃ…。

しかし。

「全くです。学院長室を破壊されるわ、授業計画を台無しにされるわ、良い迷惑です」

イレース、死人に鞭打つスタイル。

おい、やめろって。そんなこと言ったら。

「…ごめん…」

ほら。マシュリがますます落ち込んでしまった。

なんて可哀想なことを言うんだ。確かに大変ではあったけども。

マシュリだって、暴走したくてした訳じゃ…。

「ですから、これからの働きで返してもらわなければいけませんね。散々迷惑をかけた挙げ句、無責任に私達の前から姿を消すような真似は、決してさせませんよ」

「…!」

…イレース…。

…落としてから上げていくスタイル。

本当にな。

迷惑をかけてしまったと思ってるなら、その分しっかり恩を返してもらわないと。

勝手に何処かに消えるなんて御免だぞ。

「…ここが、君の居場所だからね」

シルナはマシュリの肩に手を置いて、そう言った。

「どんなに迷惑をかけられても、どんなに心配をかけられても…ここが君の帰るべき場所だから。ちゃんと帰ってきて」

「…シルナ・エインリー…」

「いなくなったら、見つかるまで探す。きみが困っていることがあるなら、一緒に悩んで、一緒に解決する。…私達は、仲間なんだから」

…その通り。

シルナの言う通りである。

「諦めた方がいーよ。ここにいる人達みーんな、一度仲間と認めたら、他国を敵に回すことは勿論…自分を殺そうとした相手だって、本気で守ろうとするんだもん」

…すぐり…。

お前が言うと、説得力が違うな。

で、それは褒め言葉ってことで良いんだよな?

「そういう訳だ、マシュリ」

逃げ道は塞がれたぞ。残念だったな。

観念して、大人しく俺達の仲間になるんだな。

「それに、お前はもう暴走しないよ。その指輪があれば」 

これ以上、自分の大切なものを自分で壊してしまうんじゃないかと、思い悩む必要はない。 
 
「指輪…」

マシュリは改めて、自分の左手の中指を見つめた。

そこには、先程シルナが嵌めた、賢者の石で作った黒い指輪があった。

マシュリにとっては…何じゃこれは、って感じだろうな。

「魔力が…吸われてる…?」

「あー、うん…」

俺達としても…その石について、イチから説明するのはなかなか骨が折れるんだが…。

…まぁ良い。この際だから、ちゃんと説明するか。