――――――…さぁ。

これで、マシュリも少し落ち着いただろうか?

「…」

改めてマシュリは、無言で周囲を見渡した。

控えめに言って…惨状、って感じになってるが。

しかし、何度も言っているように。

これはマシュリの責任ではない。

暴走したくてしてるんじゃないんだから、マシュリを責めるのはお門違いというものだ。

「…酷いね、これ」

ポツリと呟くマシュリ。

「心配するな。家具なんてまた買える」

人命が失われなかったんだから、それで充分だ。

「怪我した人達も大丈夫だよ」

天音が、回復魔法をかけ続けながら言った。

「やれやれ…。お前達と一緒にいると、気が休まる瞬間がないな」

ずっと防御魔法陣を展開してくれていたジュリスが、ようやく魔法を解除し、一息ついていた。

ごめんな、ジュリス。

「助かったよ…。お陰で、学院長室以外は壊れなくて済んだ」

「全くだ。特別手当を要求したいもんだな」

「だってよ。シルナ、ポケットマネーから出してやれ」

「馬鹿、冗談だよ。本気であんたらから金取ろうなんて思ってねぇよ」

そうか。

それは…ありがとうな。

「それより…。…ベリーシュ、大丈夫か?」

ジュリスは、天音に回復魔法をかけてもらっているベリクリーデに声をかけた。

…そういえば。

ずっとそれどころじゃなくて、スルーしてたが。

ベリーシュっていうのは一体…?

見たことない…星辰剣だっけ?二刀流の武器持ってたし…。

あれは結局何だったんだ…と、思ったが。

「…?…あ、ジュリスだ」

さっきまで、凛々しい表情をして戦っていたベリクリーデだったが。

今度は一転、いつものぽやんとした表情でジュリスを見上げていた。

「ジュリス、大丈夫?疲れた?」

「ん?あぁ…ちょっと…いや、だいぶ疲れたけど…お前の世話よりは楽だったな」

「そっか。良かったー」

…嫌味が通じない辺り、本当にいつものベリクリーデだな。

「…戻ったか…」

ジュリスは、小声で小さくそう呟いていた。

…戻った…?

どういう意味なのか分からないけど…。
  
「ジュリス…それどういう、」

と、俺が聞こうとしたそのとき。

「うぅ…。…全身が死ぬほど痛い…」

「あっ、ナジュ君…!」

ようやく、意識を失っていたナジュが目を覚ました。