神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

…しかし。

「しっかりして。自分が何をやってるのか分かってるの?これは、あなたか一番望まないこと…、」

「危ない!」

説得を続けようとするリリスに、黙れと一喝するかのように。

マシュリは、鋭い爪を振り下ろそうとした。

すんでのところで、ベリクリーデがリリスを突き飛ばし。

星辰剣と呼ばれた剣で、マシュリの鋭い爪を受け止めた。

「…っ…」

何とかマシュリの爪を弾いて止めたが、ダメージは大きかった。

ベリクリーデは苦しそうに呻き、膝をついた。

…不味い。

最大限時間を遅くしているはずなのに、何故あんなに機敏に動けるのか。

俺の時魔法、本当に効いてるか?

「ベリーシュ!無理はするなよ」

防御魔法陣を展開しながら、ジュリスが叫んだ。

「分かってる…。大丈夫、まだ戦える」

そう言って、剣を杖代わりに立ち上がるベリクリーデ。

誰だよ、ベリーシュって。

聞きたいことは山ほどあるが、それは目の前の窮地を脱してからの話だな。

「…どうやら、リリスの呼びかけも聞こえていないようですね」

そう言うなり。

ナジュの目が、獣のそれに変わった。

…お前、まさか。

「ナジュ!馬鹿、何やろうとして…、」

「止める…為、には、こうする…しか、ありません、から」

途切れ途切れ、苦しそうに喋りながら。

ナジュの風貌が、さながらマシュリの『変化』のごとく変わった。

以前…童話シリーズの『不思議の国のアリス』に閉じ込められたとき。

超巨大アリスを倒す為に見せてくれたアレを、ナジュはもう一度やろうとしているのだ。

一時的にリリスの力を借り、獣の力を身に纏う。

その効力によって、ナジュは『獣の女王』リリスの力を行使することが出来る。

しかし…その代償は大きい。

莫大な魔物の魔力に、人間であるナジュの身体が持たない。

結果、身体中がぐちゃぐちゃに崩壊して、回復には相当の時間がかかる。

ナジュにとっては諸刃の剣。

あんなこと、もう二度とやらせたくなかったのに。

「獣の力には、同じく…獣の力を、ぶつける。…理に適ってるでしょう?」

「…適ってねぇよ、馬鹿…!」

と、悪態をついたときにはもう遅い。

リリスの力を行使するナジュは、真正面から、暴走するマシュリと対峙した。