神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

それを聞いて、天音は驚いて異論を唱えた。

「そんな!危険だよ…!君達だけでこの場を抑えるなんて」

本当にな。

我ながら、かなり無茶を言ってる自覚はある。

でも、そうする必要があると判断した。

「生徒を…一人でも怪我させる訳にはいかない。シルナの学院で…誰一人」

「…羽久さん…」

シルナがいない間に、シルナの大事な生徒に、掠り傷一つでもつけてみろ。

生徒には勿論、俺はシルナに申し訳が立たない。

それに、生徒が校舎から逃げてくれれば、ジュリスも気を張って防御魔法陣を展開する必要がなくなる。

まずは、守るべきものを安全な場所に避難させなくては。

その為に、イレースや令月達の力が必要だ。

「で、でもそれじゃあ、あまりにも危険…」

「分かりました。すぐに動きましょう」

なおも反対しようとする天音を、遮るように。

イレースはただちに頷いて、くるりと踵を返した。

…さすがイレース。話が早いよ。

そして。

「…分かった。先に生徒を逃して、それが終わったらすぐ戻ってくる」

「俺達が戻るまで、何とか頑張って持ち堪えてね」

令月とすぐりも、さすがの判断力の速さだった。

…ごめんな。本来なら、お前達も守られなければならない立場なのに。

「…分かったよ。僕も覚悟を決める」

イレースや令月、すぐりの決断に、天音もようやく同意した。

「でも…くれぐれも気をつけて。危ないと思ったら逃げてね」

「…あぁ。俺もそのつもりだよ」

「ここは任せて。心配しないで」

ベリクリーデもそう言って、両手に剣を握り締めた。

妙に頼もしくて、まるでベリクリーデじゃないみたいだ。

だが、今それを指摘する暇はないな。

「…ナジュ、お前も生徒の避難を…」

ただ一人、まだ返事をしていないナジュに声をかけると。

「…僕は行きませんよ。ここで一緒に、マシュリさんを止めます」

「…!お前…」

まさか、また。

不死身の身体で、自爆覚悟でマシュリを抑えるつもりか。

そういうことをするなって、何度言ったら…。

「違いますよ。そうじゃなくて…僕の…いえ、リリスの言葉なら、マシュリさんに届くかもしれないから」

俺の心を読んだナジュが言った。

…成程、そういうことか。

ナジュの中にいる魔物…リリスは、マシュリの上司…みたいな存在なんだっけ。

上司が呼びかければ、一時的でも、マシュリの暴走を抑えられるかもしれない。

そうであって欲しいものだ。

なら…ナジュには、残ってもらった方が良さそうだ。

「…無理しないでね、ナジュ君」

「…善処しますよ」

天音は、未練がましくナジュ…友の背中を見つめ。

そして、憂いを断つようにして踵を返した。

令月とすぐりも、それに続いた。

…生徒達の避難は、彼らに任せよう。

だからそれまで、俺達は何としても時間を稼ぐ。