神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

「…分かった。手があるんだな?」

ジュリスは静かに、俺にそう聞いた。

多くは聞かなかった。

「あぁ。…ジュリス、少し頑張ってくれるか」

「ったく…とんだ厄介事に巻き込まれたもんだ」 

全くだな。申し訳ないと思ってるよ。

でも、ジュリスがいてくれて良かった。

「ジュリス、私も協力する」

ベリクリーデが、ジュリスにそう申し出た。

有り難いお言葉だが…。

…あれって、本当にベリクリーデか…?

「お前…ベリーシュか…」

「うん」

…ベリーシュ、って?

「こっちは良い。お前も羽久と一緒に、マシュリを抑えてくれ」

「っ、大丈夫なの?」

「心配するな、粘ってやるよ…。良いから頼む。これを…星辰剣(せいしんけん)を使え」

「…分かった、任せて」

ジュリスはベリクリーデに、見たことのない二振りの剣を渡した。

何だ、あの武器は…?

それに、突然雰囲気が変わったベリクリーデは…。

あれってもしかして…俺と同じ…。

と、思い至ったとき。

「羽久さんっ…大丈夫…!?」

「何事ですか、これは」

「っ、お前ら…」

天音とイレース、それから。

「どうやら、間に合わなかったようですね」

ナジュも、騒ぎを聞きつけて飛んできた。

更に。

「っ、天音、危な…!」

マシュリの魔力で吹っ飛んだ瓦礫の一部が、天音にぶつかりそうになったそのとき。

学院長室に飛び込むようにして、黒装束の令月が小太刀を振るった。

天音にぶつかる前に、瓦礫を一刀両断。

その鍛えられた体幹は、暗殺者時代のそれと全く変わりなかった。

「令月…!」

「大丈夫?どう見てもピンチだけど」

かろうじて、今のところ怪我人はいないな。

俺が壁にぶつかったくらいだ。

…そして、この場に令月がいるということは。

「はいはい、ちょっと大人しくしてねー」

「…すぐり…」

同じく黒装束をまとったすぐりが、両手に透明な糸を張り巡らせ。

暴走するマシュリを抑え込むように、がんじがらめにした。

これで、少しはマシュリを抑えられるかと思われたが…。

「…っ…!」

鼓膜が破れるような、獣の咆哮をあげ。

マシュリは渾身の力を込めて、すぐりの糸を引き千切った。

…マジかよ。

「うわぁ…。これ、一応最高強度だったんだけど…?」

「凄い怪力だね。…これは骨が折れそうだ」

すぐりは再び、両手に糸を張り巡らせ。

令月はそんなすぐりの隣に立ち、両手に小太刀を握り締めた。

…今ばかりは、生徒だ教師だと言ってる余裕はない。

素直に、お前達の加勢に感謝するよ。

シルナが戻ってくるまで、何とかこの場を凌ぐ。

その為に…。

「…天音、イレース、ナジュ。それに令月とすぐりも…。お前達は、生徒を避難させてくれ」

俺はシルナの代理として、彼らにそう頼んだ。