神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

―――――…結局、まだしばらく学院に残ることになってしまった。

決心…固めたはずだったのに。

これ以上未練が残る前に…これ以上情が移る前に…早く出て行きたかった。

でも、思いの外強く引き留められてしまった。

あんなに反対されるとは思わなかった。

リップサービスで言っているのではないことは明らかだった。

僕が自分から出ていくと言えば、反対はされるだろうけど、あくまで形だけ引き留めはするけど。

僕の意志が固いと見るや、「じゃあ好きにすれば」と言われるものだとばかり思っていた。

あんまり強く引き留めるものだから、僕も熱意に負けて…。

…。

…いや、熱意に負けたというのは言い訳だな。

そもそも、出ていく覚悟を決めたことを、彼らに話したのが間違いだった。

何も言わずに出ていけば良かった。

どうしても気が引けるなら、置き手紙だけ残していけば…。

そうすれば、僕は心置きなくイーニシュフェルト魔導学院を…ルーデュニア聖王国を去ることが出来たのに。

…まるで、引き留めて欲しかったみたいじゃないか。

自分の愚かさに、思わず胸が痛くなる。

やっぱり駄目だ。僕はここに居てはいけない。

居心地が良いと思ってる。出来れば、ずっとここにいたいなんて思ってる…。

でも、それは許されない選択。

僕は忘れていない。

その居心地の良さに胡座をかいて、獣の身でありながら幸福を享受するような真似を続ければ…。

いずれ僕は、その幸福と共に、僕に居場所をもたらしてくれた人々を巻き込んで、全て破壊してしまう。

…あの優しい人々を、僕の手にかかって殺してしまう訳にはいかない。

もう二度と…。

もう二度と、僕は僕の罪のせいで、誰かの未来を奪いたくない。

その為に、自分が血反吐を吐いて苦しい思いをする。

それが何だって言うんだ。

僕に優しくしてくれた…全ての人々を守る為なら…。

僕一人が我慢するくらい、大したことではない。