意外に思うだろう?

俺も意外だったよ。

「…どうも」

マシュリはポツリと呟いた。

「さぁ、どうぞ。お入りください」

「悪いな、シュニィ…。いきなり家に押しかけて…」

忙しかっただろうに。

一昨日の夜、「マシュリがシュニィの家に行って、シュニィに会いたいって言ってるんだが」と伝えたところ。

快く承諾してくれ、今日の為に都合をつけてくれた。

「いいえ、構いませんよ…。…それに、私もマシュリさんに会いたかったですから」

「…」

「さぁ、どうぞお上がりください。お茶を用意しますから」 

こうして、俺達はシュニィの家に上げてもらった。

聖魔騎士団団長と副団長の家にしては手狭だし、家具や調度品も庶民的である。

それでいて、隅々まで掃除が行き届いていて、所帯染みた感じは全くしない。

全部、シュニィの方針である。

聖魔騎士団の団長と副団長ともあろう者が、こんな質素な家に住んでいるとは。

豪遊しろとまでは言わないが、もう少しくらい贅沢をしても、バチは当たらないと思う。

まぁ…シュニィにとっては余計なお世話だろうから、言わないが…。

「シュニィちゃん、シュニィちゃん。お茶菓子持ってきたんだよ」

シルナが、持ってきた手土産をシュニィに渡した。

「あら、気を遣わなくて良かったんですよ」

「いやいや、良いんだよ。シュニィちゃんや、アイナちゃん達にも食べて欲しかったから」

「ありがとうございます。…ちなみに…その、このお茶菓子は…」

「チョコシュークリーム!」

「…ですよね…」

ごめんな、またチョコまみれで。

皆で食べるんだから、オーソドックスなカスタード味にしておけと言ったんだけど。

「え?チョコ味ってオーソドックスしゃないの?」って首を傾げるもんだから。それ以上何も言えなかった。

チョコ味は充分変化球だよ。普通シュークリームって言ったら、カスタードか生クリームか…。

あぁ、もう何も言うまい。

「それじゃ…お茶を用意してきますね」

「ありがとうね〜、シュニィちゃん」

シュニィはお茶を準備する為に、客間を出ていった。

俺達はその間、この客間で待っていることにする。

俺とシルナは、シュニィの家に来るのは初めてじゃないが…。

「…」

今日初めてシュニィの家を訪ねたマシュリは、興味津々の様子で部屋の中を見渡していた。

…どうだ?感想のほどは。

お前が来たいって言ったんだぞ。

「マシュリ、どうした?」

「…ポプリの匂いがする。ラベンダーだ」

あ、そう…。

まぁ、確かに良い匂いだけど…。

相変わらず、鼻が良いことで…。

…って、部屋の匂いはどうでも良いだろ。