神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

「凄い魔法だね…。これって何て言うんだろう?変身魔法…?」

と、首を傾げる天音。

分身じゃないって言ってたし…。

変身魔法…か、確かにそうなるな。

しかし、マシュリ、いや…いろりは…。

あぁ、もう。ややこしいから、マシュリで統一しよう。

名前と姿が違うってだけで、マシュリはマシュリだ。

くるりと一回転して、再びマシュリの姿に戻った。

その一回転するのって、メタモルフォーゼするのに必要な動作なんだろうか。

「僕はこの能力を、『変化(へんげ)』って呼んでる」

…とのこと。

変化…そのまんまだな。

「器用なことが出来るんだな…」

「別に、そうでもないよ。そもそも僕の今のこの姿だって、『変化』した姿だから」

え?

「それがデフォルトなんじゃないのか」

「忘れた?僕の元の姿は、ケルベロスと人間のキメラ…四足のバケモノだよ」

あ、えぇと…。

…そうなんだっけ。

「あの姿じゃ、ろくに表を歩くことも出来ないから…。怪しまれないように、現世にいるときは人の姿を保てるように、時間をかけて練習した」

「…成程…」

マシュリの今の姿、人間の姿は、『変化』の能力を使ったもの。

そして、人間に『変化』するのと同じ要領で、猫に姿を変えることも出来る…と。

これほど丁寧に種明かしをされると、結構冷静に受け止められるもんだな。

難しいことは何もない。これはただの、マシュリ特有の能力だ。

ナジュの読心魔法みたいなもんだな。

「…しかし、そこまでして学院に潜り込んだのに、何故私達や生徒には何の手出しもしなかったんです?」

と、イレースが尋ねた。

…確かに。

お得意の『変化』を巧みに使って、誰にもバレずに学院に潜り込むことに成功した。

そのまま上手くやれば、俺やシルナを不意打ちで奇襲…なんて作戦も立てられたはず。

何故それをせず、敢えてターゲットをシュニィ…聖魔騎士団に移した?

最初にイーニシュフェルト魔導学院を目指してきたってことは、当初のターゲットは俺達だったんだろう?

「…それは…」

これまでの質問には淀みなく答えていたのに、この質問にマシュリは口ごもっていた。

…聞かれて困ることがあったか?

「答えたくないなら、無理には…」

「…ううん。良いよ、話す。…最初僕は、学院長のシルナ・エインリーや、その右腕の羽久・グラスフィアを…暗殺するつもりで、イーニシュフェルト魔導学院に来た」

マシュリは正直に、はっきりと認めた。

…やっぱりそうだったのか。

まぁ、そうだよな。

そんなに念入りに「変装」して、学院に忍び込むくらいなんだから。

明確な目的があったのだろう。

…シルナや俺の暗殺という、明確な目的が。

今更だが、実行に移されなくて本当に良かった。

さすがの俺達も、まさか猫に命を狙われているとは思わなかったからな。