「…」

「…マシュリさん…」

マシュリは黙って、何も答えずに俯いていた。

…下手な慰めは逆効果…だろうな。

俺に言えることは、全部言ったよ。

出来れば、「そんなの気にしなくて良い。腹を決めてここにいろよ」と、多少強引でも説得したかった。

…だが、それはあまりにも利己的過ぎる。

結局は…マシュリ自身が決めるしかない訳で…。

「…返事は、今じゃなくても良いです」

シュニィは無理矢理に笑顔を作って、努めて明るい口調で言った。

「少しの間なら、私達の傍に居ても大丈夫でしょう?」

「…それは…少しの間なら、大丈夫だろうけど…」

とのこと。
 
なら、決まりだな。

「だったら、しばらくルーデュニア聖王国に滞在していってください。それからマシュリさんの気持ちが落ち着いたら、改めてあなたがどうしたいか教えて下さい」

「…」

「…駄目ですか?」

嫌です、やっぱり出ていく、と言われたら説得するのが大変だが。

「…分かった、そうするよ」

幸い、マシュリはこの条件を呑んでくれた。

良かった。これで、少し猶予が生まれたな。





…こうして。

ケルベロスと人間のキメラ、マシュリのルーデュニア聖王国滞在が決まった。