憎き誘拐犯を前にして、アトラスが暴走しないかと不安だったが。
「…」
ちらりと横目で見たところ、アトラスは非常に険しい顔をしているものの。
今すぐ、大剣振りかざしてマシュリに飛びかかろう…という意志はないようだ。
ひとまず安心だな。
「ですが、マシュリさん…。それはマシュリさんの意志ではないでしょう?」
シュニィが尋ねた。
「アーリヤット皇王に命令されたのは、聖魔騎士団の重要な人物を『どうにかする』こと。その方法までは指定されなかった」
「…」
「シュニィ・ルシェリートを誘拐する計画を立てて、実行に移したのは僕の意志だよ」
…シュニィ誘拐の計画を立て、実行に移したのは自分。
ナツキ様の命令ではなく、マシュリ自身が考えて行ったこと。
つまり、今回のシュニィ誘拐事件の責任は自分にある。
ナツキ様の意志は関係ない…。
そう言いたいのだろう。
自分の罪を潔く認める…その姿勢には好感が持てる。
成程。
シュニィがしきりに、マシュリを悪い人じゃないと主張していた理由が、少し分かった。
見た目だけじゃなくて、その態度も、とても凶悪な誘拐犯には見えない。
「…君、シュニィ・ルシェリートの家族なんだよね」
マシュリはすっと立ち上がって、アトラスに向き直った。
お、おい大丈夫か?
アトラスに下手なこと言ったら、鼻血だけじゃ済まないぞ。
「…そうだ」
「謝っても許してもらえないと思うけど…でも、ごめん。君の奥さんに恨みはなかったんだ」
…非常にストレートに謝罪。
「ただ…彼女なら分かってくれると思ったんだ。彼女は僕の同類だって…。虐げられる痛みを知ってるから」
「…」
「僕も…誰かと一緒に居たかった。同類の彼女なら、僕の気持ちを分かってくれると…そう思って…だから、君のシュニィを連れ去るような真似をしてしまった。…ごめんなさい」
誘拐犯があまりに素直で、責めるに責められない空気になってきた。
案の定アトラスも、顔をしかめてマシュリを睨むだけであった。
「もっと早くに気づくべきだった…。もっと早くに認めるべきだった。…この世の何処にも、自分の居場所なんて存在しないことを」
…。
…それは…。
その言葉を聞いたとき、シルナの顔が曇ったのを…俺は見逃さなかった。
「…僕は、この国を出ていくよ」
マシュリがそう言った。
「…逃げるのか?」
「違う、守る為だ。僕は人間の傍に居ちゃいけない。また力が暴走して…制御がつかなくなる前に」
暴走…制御?
俺には意味不明だが、かなり重要なことを言っているのはよく分かる。
「もう二度と、自分の罪に誰も巻き込みたくない…」
「…マシュリさん…」
…どうやらマシュリとシュニィの間で、様々な言葉が交わされたようだな。
俺にもシルナにもアトラスにも、二人が何を言いたいのかさっぱりだったが。
ナジュだけは、シュニィの心を読んで、事態を把握しているようで。
「…ふむ、成程。説明すると長くなりそうですが…。これだけは言えますね」
と言って、ナジュは俺達の方を向いた。
「色々と複雑な事情がお有りのようですが、シュニィさんの見立て通り、この人のことは信用して良いと思いますよ」
…だ、そうだ。
ナジュがそう言うなら、安心だな。
「…」
ちらりと横目で見たところ、アトラスは非常に険しい顔をしているものの。
今すぐ、大剣振りかざしてマシュリに飛びかかろう…という意志はないようだ。
ひとまず安心だな。
「ですが、マシュリさん…。それはマシュリさんの意志ではないでしょう?」
シュニィが尋ねた。
「アーリヤット皇王に命令されたのは、聖魔騎士団の重要な人物を『どうにかする』こと。その方法までは指定されなかった」
「…」
「シュニィ・ルシェリートを誘拐する計画を立てて、実行に移したのは僕の意志だよ」
…シュニィ誘拐の計画を立て、実行に移したのは自分。
ナツキ様の命令ではなく、マシュリ自身が考えて行ったこと。
つまり、今回のシュニィ誘拐事件の責任は自分にある。
ナツキ様の意志は関係ない…。
そう言いたいのだろう。
自分の罪を潔く認める…その姿勢には好感が持てる。
成程。
シュニィがしきりに、マシュリを悪い人じゃないと主張していた理由が、少し分かった。
見た目だけじゃなくて、その態度も、とても凶悪な誘拐犯には見えない。
「…君、シュニィ・ルシェリートの家族なんだよね」
マシュリはすっと立ち上がって、アトラスに向き直った。
お、おい大丈夫か?
アトラスに下手なこと言ったら、鼻血だけじゃ済まないぞ。
「…そうだ」
「謝っても許してもらえないと思うけど…でも、ごめん。君の奥さんに恨みはなかったんだ」
…非常にストレートに謝罪。
「ただ…彼女なら分かってくれると思ったんだ。彼女は僕の同類だって…。虐げられる痛みを知ってるから」
「…」
「僕も…誰かと一緒に居たかった。同類の彼女なら、僕の気持ちを分かってくれると…そう思って…だから、君のシュニィを連れ去るような真似をしてしまった。…ごめんなさい」
誘拐犯があまりに素直で、責めるに責められない空気になってきた。
案の定アトラスも、顔をしかめてマシュリを睨むだけであった。
「もっと早くに気づくべきだった…。もっと早くに認めるべきだった。…この世の何処にも、自分の居場所なんて存在しないことを」
…。
…それは…。
その言葉を聞いたとき、シルナの顔が曇ったのを…俺は見逃さなかった。
「…僕は、この国を出ていくよ」
マシュリがそう言った。
「…逃げるのか?」
「違う、守る為だ。僕は人間の傍に居ちゃいけない。また力が暴走して…制御がつかなくなる前に」
暴走…制御?
俺には意味不明だが、かなり重要なことを言っているのはよく分かる。
「もう二度と、自分の罪に誰も巻き込みたくない…」
「…マシュリさん…」
…どうやらマシュリとシュニィの間で、様々な言葉が交わされたようだな。
俺にもシルナにもアトラスにも、二人が何を言いたいのかさっぱりだったが。
ナジュだけは、シュニィの心を読んで、事態を把握しているようで。
「…ふむ、成程。説明すると長くなりそうですが…。これだけは言えますね」
と言って、ナジュは俺達の方を向いた。
「色々と複雑な事情がお有りのようですが、シュニィさんの見立て通り、この人のことは信用して良いと思いますよ」
…だ、そうだ。
ナジュがそう言うなら、安心だな。


