神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

――――――…時は少し遡る。




今朝、目を覚ますなり。

ナジュが学院の教員達に、すぐさま招集をかけた。

今度はイレースと天音、それから…一応元暗殺者組の二人も呼んだ。

あいつらは、遠ざけておいても必ず首を突っ込んでくるからな。

どうせ盗み聞きされるに決まっているので、いっそこちらから呼んだ。

イレースや天音達は、突然の招集にもすぐさま駆けつけてくれたが。

肝心のシルナは寝ぼけ眼で、危うくイレースに目覚ましビンタ、ならぬ目覚まし拳骨を食らうところだった。

まぁ、それは良いんだ。そんなことは。

「シュニィさんを誘拐した犯人の正体が分かりました」という前置きの後。

ナジュは、昨晩精神世界でリリスに聞いた…犯人の魔物について話してくれた。

ナジュが教えてくれた衝撃の真実に、驚いている間もなく。

とにかくこの情報を、聖魔騎士団の連中にも…今もシュニィを必死に探している仲間達に…一刻も早く伝えなければならない。

そう思って、俺とシルナとナジュの三人で、朝っぱらから聖魔騎士団魔導隊舎に走ってきた。

入り口でジュリスの居場所を聞いたら、男性隊舎にいるって言われたから。

慌てて駆けつけてみたら、そこにシュニィがいた。 

これには俺も驚いた。

まさか、既に見つかっていたとは。

曰く、見つけたのはベリクリーデだそうだ。

しかも、何か根拠がある訳ではなく。

ただ直感で、「ここにいる気がする」と言って探してたら、本当に見つけたらしい。

…男性隊舎の空き部屋で、だそうだ。

まさかそんな近くにいたとは。

これまで必死に探していた俺達って、一体。

見つかったのは嬉しいけど、申し訳ないが素直に喜べなかった。

節穴にも程があるだろ。俺達の目…。

しかし、己の間抜けを責めるのは後回しだ。

ナジュから、犯人の正体が知らされた今。

悠長なことやっている暇はない。すぐにでもシュニィを魔物の手から保護しなければならない…。

…はずだったのだが。

「あー、シュニィと一緒にいた魔物?あいつなら、さっき客室に案内してきたよ」

犯人の魔物を捕まえたのか、という俺の問いに、ジュリスはそう答えた。

…は?

「彼の名前はマシュリさんですよ」

シュニィは犯人の名前を教えてくれた。

憎い相手のはずなのに、何故親しみを込めて名前で呼んでいるのか。

と言うか…。

「客室…?牢屋だよな?」

ナジュの話が本当なら、さぞや骨が折れたことだろう。

怪我人が出ていてもおかしくない…はずなのだが。

驚くほど、ジュリスもシュニィもベリクリーデも平然としていた。

…あれ…?

「いや、客室だ。来客が来たときに通す部屋」

「…何でそんなところに?」

「シュニィが閉じ込めないでくれって言うからな。それに、ベリクリーデもあいつは無害だって言ってるし」

「…」

「本人も、逃げる様子も抵抗する気配もないし、そういうことなら大丈夫だろうと思って」

…マジで?

自分を誘拐して、閉じ込めた相手を客人扱い?

どうなってるんだ。シュニィの懐の広さは。