神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

「…君達…」

シルナも、驚いた顔をして手が止まっていた。

どうやらシルナも気づいたようだな。

生徒達が連れてきた猫に、

「なんて良いところに…!チョコマフィンを食べに来てくれたんだね?」

…は?

シルナお前、何言ってんの?

「え?いや、あの…」

これには女子生徒達も困惑を隠せない。

「良いから良いから、さぁ座って!美味しいチョコバナナマフィンがあるんだよ〜」

何も良くないだろ。

お前の目には、猫の姿が見えないのか?

「あ、あの…学院長先生…」

「大丈夫、飲み物はちゃんと用意してあるから」

飲み物の話じゃねーだろ。

ちょっと一発殴って、正気を取り戻させた方が良いかもしれない。

久々に大人数の生徒が訪ねてきてくれたもんだから、テンション高くなってんだろう。

「そうじゃなくて…実は、その…相談したいことがあって…」

よし、よく言った。

「相談したいこと…?」

「はい…。今、お時間良いでしょうか…?」

「…」

シルナはしばし無言で、女子生徒の顔を見つめ。

そして。

「…その話、チョコバナナマフィンの後で良い?」

どうしても、生徒と一緒にマフィンを食べることを諦められなかったらしい。

何処から来てるんだ。お前のその執念は。

「は、はぁ…」

「何でも聞く、何でも聞くよ私は。しかしその前に…チョコバナナマフィンを食べる時間くらいはあるんじゃないだろうか。それくらいの人生の余裕は持って生きるべきじゃないかと思うんだ」

真剣な顔で言ってることは、要約すると「皆と一緒にチョコバナナマフィンが食べたい」これだけである。

もっと大事なことがあるだろ。世の中には。

「…えーっと…」

女子生徒も戸惑ってるじゃないか。

「チョコマフィンのことなんてどうでも良いんだよ」

俺が、シルナを押し退けてそう言った。

こいつがまともに会話出来ないなら、俺が聞くよ。

「お前ら、その猫どうした?」

「…それなんですけど…」

「…え?猫?」

と、シルナが素っ頓狂な声を上げた。

…こいつ。

「えっ?あっ、猫だ!えぇっ?猫がいる!?」

今気づいたのか。この馬鹿シルナ。

おせーよ。

「かわい〜!何処で見つけたの?この子。うわぁ〜、人に慣れてるな〜」

なでなで、と猫の背中を撫でるシルナである。

…呑気な奴だよ。

良い歳したおっさんが、猫と戯れてはしゃぐんじゃねぇ。

猫の方もおっさんに撫で回されるのは嫌だったのか、抗議するかのように「にゃー」と一声鳴いた。

「名前は?この子名前何て言うの?」

「えっ、えぇと…」

猫の名前を聞く前に、もっと他に聞くべきことがあるだろ。

「名前はその…まだ決まってなくて」

「えー、そうなんだ…。名前はまだにゃい!なんちゃって」

殴るぞ。

「そっか〜。可愛いなぁ、猫ちゃん。よしよし…」

「…」

「…あれっ?何で学院の中に猫がいるの?」

…今かよ。聞くのは。