他に何て言って慰めてあげられただろう。

こんないじらしい子供に。

「アイナちゃんは、とっても良い子だからね。きっともうすぐ、お母さんは帰ってきてくれるよ」

何の保証もない、ただの気休めだ。

だが、そう言って慰める以外、俺達に出来ることはない。

「もう少し…もう少しだけ我慢しようね。そうしたら、きっと帰ってきてくれるから。お母さんが帰ってきたら、アイナちゃんがどんなに良い子だったか、お母さんに話してあげるよ」

全くだ。

シルナなんかより遥かに良い子だったって、胸を張ってシュニィに報告出来るぞ。

だからそのときは、たくさん褒めてもらえるだろう。

「出来る?我慢出来る?」

「…うん!」

アイナは力強く、こくりと頷いた。

よし、良い子だ。

「うん。頑張ろうね、アイナちゃん。あと少しだから」

シュニィがいつ戻ってくる…どころか。

本当は、シュニィの居場所について、全く目処もついていないのに。

それでもアイナに対して、このように無責任な約束をした。

こんなことをしたら、結果的に余計アイナを深く傷つけてしまう事態になりかねない。

それは俺にも、シルナにも分かっている。

…しかし、同時に俺は確信していのだ。

きっとシルナもそうだろう。

こんな聞き分けの良い、立派な娘がいるのに。

あのシュニィが、娘達を置き去りにして消えるはずがない。

必ず戻ってくるはずだ。

いや…戻ってこさせる。

そして戻ってきたシュニィに、アイナの頭を撫でて褒めてあげるよう頼むのだ。

そのときまで、俺達は決して諦めるつもりはない。