蘭さんとお茶をした夜、そのことを和仁さんに話した。


「鏡花水月ってすごく素敵な言葉だなって思ったの。それでね、子どもの名前なんだけど、水月(すいげつ)ちゃんはどうかしら?」

「……普通そっちを取るか?」

「あら、だったら鏡花(きょうか)ちゃん?」

「女の子なら鏡花の方がいいだろう」

「水月ちゃんもかわいいと思うけど、そうね。鏡花ちゃんにしましょう」

「男の子なら水月もありかもな」

「あら素敵!それがいいわ!」


 まだ赤ちゃんの性別はわからないのに、もう名前を考え始めるなんて気が早いかもしれない。
 実際に顔を見たら違うってなるかもしれないけど、一旦名前を決めてしまった。


「性別がわかるまでは鏡花水月ちゃんね!」

「……長いな」


 そんな会話がとても楽しい。

 無事に産まれてきてくれるかしら?
 男の子でも女の子でもいいから、元気に産まれてきて欲しい。

 今からこの子に会えるのが楽しみで仕方ない。


「早く会いたいわ」

「ああ、早く会いたいな」

「ねぇ和仁さん、私は今すっごく幸せよ。和仁さんは?」

「……幸せだ」


 そう言ってぎゅっと抱きしめてくれた。

 私も和仁さんも過去には悲しいことがあった。
 けれどそれでも生きていたからこそ、こうして巡り会えて今がある。

 最初は愛なんてなかった。親に決められた政略結婚だった。
 でも今は確かに愛があって、その愛が新たな命として宿っている。

 これからは二人で、ううん三人でもっと幸せな家庭を築いていきたいな――。