やがて落ち着いた私の涙を掬い上げてくれる和仁さんと目が合った。

 視線が絡み合い、引き寄せられるように顔を近づけて――初めてキスを交わした。

 ちょっとだけ涙の味がしてしょっぱかった。


「……ダメだな」


 和仁さんはこつん、と額をくっつける。


「一度触れると歯止めが効かなくなりそうだ」

「効かなくなってはいけないのですか?」

「言っただろう……君を傷つけたくない」

「和仁さん、私をワレモノか何かだと思ってません?」


 ちょっと触ったら壊れてしまうかのような。
 私はそんなにヤワじゃない。

 和仁さんの手を握り、そっと自分の頬に当てた。


「受け止めますよ。だって私、和仁さんの妻ですから」

「ジェシカ……」


 二度目のキスはもっと深くて甘かった。

 唇を食まれて、こじ開けられて、侵入してきた舌に呼吸さえも絡め取られる。
 それが気持ちよくてふわふわして、とろけそう――。

 とろけ切った私の体を軽々しく持ち上げられたかと思うと、優しくベッドに寝かされた。


「和仁さん……」

「誰も愛さないと思っていたのに……君を愛してもいいだろうか」

「私は好きです……和仁さんのこと」

「ジェシカ……」


 軋むベッドの上で私たちは初めて抱き合った。
 確かにそこには愛があって、心も体も一つになれたと思った。


「愛してる」


 そう囁かれる度に泣きたくなる程嬉しくて……何度も抱きしめ合って求め合った。

 本当の夫婦になれたこの夜のこと、私はきっと生涯忘れないと思う。