華道教室に通い始めて2週間程した頃、私はある人物と出会った。

 私と同じ年頃の若い女性で、見事な生け花を生けていた。あまりの美しさに思わず釘付けになってしまっていた。

 しばらくずっと見惚れていたら、その人が私に気づいて振り返る。


「生徒さん?」

「あっはい!すみません、あまりにも美しくてつい見惚れてしまいましたっ」


 するとその女性は穏やかに微笑んだ。


「それは光栄ですね。ありがとう」

「私、吉野ジェシカと申します。最近この教室に入ったばかりで」

「……吉野?」

「あ、はい」

「もしかして、桜花組の?」

「えっ」


 桜花組のことを知っている?
 そういえばお義母様とお家元は知り合いだと仰っていたっけ。


「もしかして和仁さんの奥様かしら?」

「え、はい、そうです」

「これはご挨拶が遅くなってごめんなさい。私は満咲(みつさき)(らん)と申します。家元の娘です」


 えっ!?家元の娘さん!?
 どうりで美しい生け花を生けるはずだわ!


「私の夫と和仁さんは学生時代からの友人で、結婚式にも出席していただいたの。いつもお世話になっております」

「そうだったんですね!こちらこそお世話になります!」