「姐さんは休んでてくだせえ!」


 そして私には何も手伝わせてくれない。
 流石にやってもらってばかりでは申し訳ないと思ったのだけれど、「姐さんを働かせたら俺たちが兄貴に叱られます」と言われてしまった。

 ちなみに私は英会話教室の講師をしていたのだけれど、結婚を機に退職した。
 だから結婚したら専業主婦になるつもりだったのに、今この状況は専業主婦ですらない。

 つまり、私ってただのニート……?


「何かあれば、これを好きに使ってくれ」


 和仁さんに渡されたのはブラックカードだった。
 本当にあるんだ!と少し感動した。

 でも流石に使う気にはなれなくて、一度も使っていない。

 和仁さんとは当然のように寝室は別だ。
 いつも組の仕事で忙しそうにしているし、ほとんど顔を合わせることがない。


「……私、何のためにこの家に来たのかしら」


 わかってる、これは形だけの結婚だから。
 和仁さんは本当に私に何も望んでいないのだ。

 私はただのお飾りの妻。


「いや、落ち込んでる場合じゃないわ、ジェシカ。これは私が決めた道なんだもの」


 私には私のできることを探せばいいのだわ。
 そう考えた私は、初めてカードを手にして出かけた。