キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】

おかゆと一緒に置かれているレンゲを手に持って、口に運ぼうとしたとき。


……カラン

軽快な音と共に、レンゲがフローリングに落ちてしまった。

キッチンに戻ろうとしていた母も驚いて、再びリビングへとやって来る。


「葵?」

「……な、なんか……手に力が、入らなくて」

「えっ? 大丈夫なの?」


……わからない。
入院中もこんなことにはならなかった。

もしかしてこれも、病気と関係している?
そうだったら怖いなと思いつつぎゅっと自分の右手を握っていると、なんとなくいつも通りに戻った気がした。


「ごめん。もう大丈夫」

「葵……あのね。明日は、家にいた方がいいんじゃない?」


母が汚れたフローリングを拭きながら、私にそう言う。

明日……本当は、ちょっと楽しみだったんだ。
体調が万全かと聞かれるとそうではないけれど、久しぶりに外へ出て気分転換ができると思っていた。

でもこの状況では、きっと家族は外出を許してくれないだろう。
母だってきっと、私のためを思って言ってくれていると思う。


「うん……そうする」


苦渋の決断だった。

やりたいことも、満足にできない。
行きたいところへも、すぐに行けない。

いつの間に、私の身体はこんな風になってしまったの?

どうして、私なの?