……そんなのはイヤだ。聞きたくない。

ドキドキしながら、五十嵐先生の次の言葉を待つ。


「葵さんと一緒に、この治療を乗り越えさせていただきたく思います」


「え?」


深々と、私の両親に向かって頭を下げている五十嵐先生。
ざわつき始める、ナースステーション。

突然の告白に、両親は目を大きく見開いて彼の方を見ている。


「ちょ……ちょっと待ってください」


まだ、自分の中での返事は確定していない。
それなのに、それをすっ飛ばして両親にそんなことを言ってもらっては困る。

両親だって「突然なんなの?」というような表情で、五十嵐先生のことを見ているし……。


「い、五十嵐先生。やめてください。こんなところで……」

「俺は本気です。まだ本人からのお返事はいただいておりませんが、俺の気持ちだけでもお伝えさせていただきます」


頭を上げて、両親と真っ直ぐ向き合って、真剣な眼差しでそう言った彼。
それだけ伝えると「じゃあ、また」と言ってその場を去ってしまった。

両親は「わけがわからない」と言った感じで、お互いの顔を見ている。

まさか……。
五十嵐先生が、こんなことまでするなんて思ってなかった。

こんなことをされてしまったら、いい加減な気持で五十嵐先生の気持ちに応えるわけにはいかない。


戸惑いつつも、私と両親は病院を離れ、帰宅した。