キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】

化学療法で入院する患者さんは、基本的に個室となっている。
相部屋に比べたら広いし綺麗なイメージだけど、ここで独りって寂しいな……。


「じゃあ、矢田ちゃん。私はここで。また来るから、辛いことあったら溜め込まないで」

「森脇さん……遅くまでありがとうございました」


深々と頭を下げて、精一杯感謝の気持ちを伝えた。
頭を上げると同時にぎゅっと手を握られ、泣きそうになる。

森脇さんには、これからもいっぱいお世話になりそうだ。


森脇さんが出て行ったのと入れ替わりで病室に入って来たのは、両親だった。
私の姿を見るなり涙を流し始めた母。

私の傍へと駆け寄ると、ぎゅっと抱きしめられた。


「葵……。大変なことになったのね。お母さん、なんでもするから、遠慮しないでね」

「お母さん……」

「葵。独りじゃないからな」


私の前では決して涙を見せない父も、今日ばかりは目に薄っすらと涙を浮かべている。

そうだ。私は独りじゃない。
こんなにも私を思ってくれる人がいる……。

そのためにも、絶対治さないと。


「みなさん、お揃いで」


両親に続いて病室に入って来たのは、私の主治医にもなる五十嵐先生だった。

もう夜も遅くほかの部屋は使えないため、ノートパソコン型の電子カルテを使って病状説明を病室でしてくれるらしい。