いや待って。これじゃあまるで、私が五十嵐先生のことをもっと知りたいと思っているみたいじゃない。
あんな不愛想で冷たい人、私が好きになったりしない。

愛想がよくて物腰が柔らかくて……五十嵐先生とは真逆のタイプの男性が、私は好きかも。

エレベーター内で頭をぶんぶんと振って気持ちを切り替える。
1階に到着したことを知らされ、エレベーターを降りて外科の外来に向かおうとしたとき。


「痛っ……!」


突然、背部の痛みを感じた。

そういえば。朝起きたときも、同じようなことがあったかも。
しばらく様子を見てなんともなかったから出勤したんだけど、また同じような痛みだ。

誰かに叩かれたとか、転倒してぶつけたとかでもないし……また様子を見てみようかな。


「……おはようございます」

「おはよう矢田ちゃん。あれ? なんか体調悪い?」

「あ、いえ。今朝から、なんだか背部が痛くて」

「え、どの辺り?」


「えーっと、この辺りで」と、背中を擦りながら森脇さんに痛みがある場所を教える。

私の背後に回り、背中に異変がないかを洋服の上から確認してくれる森脇さん。


「うーん。見た感じでは、なんともないね。でも、気になるなら整形受診してみたらどう?」

「あ……そうですね。午前中の1番最後に、診察してもらいます」