きょろきょろと周りを見渡して森脇さんの姿を探すけれど、彼女は別のナースたちと盛り上がっている。

せっかく盛り上がっているところを、邪魔するわけにはいかないよね……。


「矢田、こっち」

「えっ!? ちょ……待って」


どうしようかと思っているうちに腕を引かれ、あっという間に店内の外に出されてしまった。

恐怖で身体がガタガタと震えているのもあって、上手く歩けない。

どうしよう……。私、このまま五十嵐先生に襲われてしまうの?
お酒の勢いでこんなこと……絶対に嫌だよ。

恐怖に怯えながらしばらく一緒に歩かされ、お店から少し離れた場所でやっと手が離れた。


「矢田。そろそろ帰る時間だろ」

「……はい?」

「みんないい感じに酔ってきてるし、これ以上居座ると危ない」

「えっ……」


驚いて、目を大きく見開いた。

まさか。そんな理由で私を外へ?
私が昨年の歓迎会で起きた出来事を、心配してくれていたの?

嘘……。信じられない。


「まだ早い時間だし、送らないよ。一緒に抜けたら怪しまれるだけだからな」


そう言って、五十嵐先生は再びお店へと戻って行く。
予想外の出来事になにも言うことができずに、慌てて五十嵐先生の背中に向かって頭を下げた。

なんとも言えない不器用な連れ出し方に、思わず「クスッ」と笑ってしまう。