手紙をもう一度封筒にしまい、引き出しの中に入れる。


葵に会いたい。
本当は、今すぐにでも葵に会いたい。

会って抱きしめて「もう離さない」と言いたい。


5年間もの間、ずっと手紙を読めなかった理由――。
葵に、会いたくなるから。

愛する人がすぐそばにいること。
それがどのくらい幸せなのか、葵と離れるまで気が付かなかった。

当たり前の日常を、当たり前だと思ってはいけない。

明日は、いつも通りの日常がこないかもしれない。
そのことを、忘れてはいけないんだ。


「また会おうな、葵」


涙を拭って窓の外を見ると、雪がチラついている。

大丈夫だ、葵。
俺はこの先も、葵しか愛せないから。

また会える日まで、今を精一杯生きようと思う。

そして、葵の願いを叶える。


雪がチラつく冬の空に、そう誓った。


*END*