しばらく沈黙が続いた後、葵がやっと口を開いてくれた。


「……後悔、しない?」

「絶対しない。ここで葵を妻にしなかったら、俺はそっちに後悔する」

「匠真……」


目に涙を浮かべたまま笑顔を見せた葵は、両手を広げて『抱きしめて』と訴えかけてくる。

俺はそれを受け入れるかのように、葵のことを強く抱きしめた。
葵の熱が、直に伝わってくる。


あぁ……。
やっぱり俺は、葵じゃないとダメだ。

葵がどこに行っても、どんな姿になっても、彼女に対する愛は変わらない。


「私……匠真の、お嫁さんになりたい」


耳元でそう言った葵の言葉に、俺は涙を流さずにはいられなかった。

今、俺はこの世界で1番の幸せ者だ。

大袈裟でもなんでもない。
最愛の女性である葵に結婚を承諾してもらえたことは、今までの人生で1番嬉しい。

……多分、医師免許取得したときよりも嬉しいぞ。


「匠真……こんな私をお嫁さんにしてくれてありがとう」


そう言いながら、俺の頬にキスを落とした葵。

いや。だから、俺は本当に葵以外の女性を嫁にもらう気はないんだって。


「葵、指輪。交換しようか?」

「えっ、あ……はい」


葵の家族や森脇が見守る中、お互いの左手薬指に結婚指輪が通された。

その場面で1番泣いていたのは葵でもなく、家族でもなく。
森脇だったことは、周りには内緒にしておこうか……。