10月中旬。
葵の癌再発が発覚し、再び長い闘病生活が始まった。
ナースステーションにある電子カルテで、入院患者の薬を処方していたときのこと。
「五十嵐先生。ご無沙汰してます」
聞き慣れた声とともにナースステーションの入り口に顔を出したのは、看護師の森脇。
8月31日付で育児休暇に入った彼女が、小さな赤ちゃんを抱っこして現れた。
「あぁ。どうも」
「もう。不愛想なのは変わってませんね」
「……悪いな」
森脇の顔を見ることもなく返事をし、薬の処方を終えると席を立った。
今から葵の点滴交換に行くつもりだ。
というのはほぼ口実で、葵の様子を見に行くのだけれど。
入院中で人の出入りがあるとはいえ、病室では1人。
寂しいに決まっている。
だから、時間があれば頻繁に病室に向かう様にはしていた。
交換用の新しい点滴バッグを準備し、ナースステーションを出ようとしたときだ。
「五十嵐先生、ちょっと」
呼び止めたのは、森脇。
俺と話がしたいのか、誰もいないカンファレンスルームへと引っ張られる。
「少し、五十嵐先生にお話が」
「なんだ。時間があまりないのだが」
「わかってます。でも、矢田ちゃんのことでちょっと」
葵の癌再発が発覚し、再び長い闘病生活が始まった。
ナースステーションにある電子カルテで、入院患者の薬を処方していたときのこと。
「五十嵐先生。ご無沙汰してます」
聞き慣れた声とともにナースステーションの入り口に顔を出したのは、看護師の森脇。
8月31日付で育児休暇に入った彼女が、小さな赤ちゃんを抱っこして現れた。
「あぁ。どうも」
「もう。不愛想なのは変わってませんね」
「……悪いな」
森脇の顔を見ることもなく返事をし、薬の処方を終えると席を立った。
今から葵の点滴交換に行くつもりだ。
というのはほぼ口実で、葵の様子を見に行くのだけれど。
入院中で人の出入りがあるとはいえ、病室では1人。
寂しいに決まっている。
だから、時間があれば頻繁に病室に向かう様にはしていた。
交換用の新しい点滴バッグを準備し、ナースステーションを出ようとしたときだ。
「五十嵐先生、ちょっと」
呼び止めたのは、森脇。
俺と話がしたいのか、誰もいないカンファレンスルームへと引っ張られる。
「少し、五十嵐先生にお話が」
「なんだ。時間があまりないのだが」
「わかってます。でも、矢田ちゃんのことでちょっと」