キミと過ごした、光輝く270日間のキセキ【2.19おまけ追加・完結】

匠真のサポートは手厚いけれど、私の身体がそれについていけるのかが心配だ。


「矢田さん、弱気なことは言わない方がいい」

「えっ!?」


突然、頭上から降ってきた低い声。

驚いて振り向くと、先ほど病棟に向かったはずの大貫先生が後ろに立っている。

やばい……聞かれたよね?
完全な独り言になるはずだったのに。


「あ……えっと、すみません。冗談ですので、聞き流してください」

「冗談? 冗談にしてはキツイな」

「私も人間ですので。弱気になるときもあります」


「それもそうか」と、私が手にしている書類に目を落とした大貫先生。
患者さんの名前を見た瞬間、顔を(しか)めた彼。

あぁ、やっぱり。
大貫先生も、この患者さんのことは覚えているんだろうな。

中條さんの乳房切除オペは、以前の主治医と大貫先生で入っていたはずだから。


「大丈夫さ。治療も、順調なんだろ?」

「はい。おかげ様で」

「落ち込んだままだと、可愛い顔が台無しになる」


「え?」と、顔を上げたと同じくらいに、大貫先生が私の頬に手を添えた。

突然の出来事に、身体が動かなくなってしまう。


「……あ、あの。もうすぐオペ出しでは?」

「あぁ、そうなんだけど。でも……」


大貫先生がなにか言いかけたところで、スクラブのポケットに入っている院内用のスマホが着信を知らせた。